モバイルインターネットの価格下降の裏で起こりそうなMVNOの再編 残るMVNOについて考える

現在、政府からの意向を受ける形で大手キャリアが横並び気味ではあるものの、一斉にモバイル通信料を下げてきていて、ユーザーはその恩恵を受けているように思います。現在、NTTドコモ・au・ソフトバンクという大手三キャリアのプランではなく、ネット受付限定のセクションで各社5分通話定額付きで月20GBの高速通信可能なプランが税抜2,980円(auとソフトバンク系では通話定額抜きで月額2,480円の契約も可能)で提供されることになり、それなりに外で動画を見るなどデータ通信を比較的多く使う人にとっては、そのユーザーをまるごと取り込んでしまうくらいのインパクトがあります。

そうなると、今まで大手から回線を借りて単価を安く提供していたいわゆるMVNOはどうなってしまうのか? という事が気になります。そこで今回は、現在のMVNOにおける利用者のデータから、今後のMVNOはどうなっていくのかという点について考えてみることにします。

今回利用するデータは、MMD研究所が15歳~69歳の男女40,000人を対象に2020年10月16日~10月18日の期間で「2020年11月通信サービスの利用動向調査」を実施したデータを基にしています。その時点で、あえて大手キャリアではなくMVNOをメインに選んでいるユーザーはどこに入っているのかを、5%以上あるところについて見てみます。なおここでは、MVNOの楽天モバイルは除外していて、サブブランドのUQモバイルとYmobileは最初から統計に入っていません。

・mineo 14.2%
・OCNモバイルONE 10.7%
・LINEモバイル 8.7%
・BIGLOBE 8.6%
・IIJmio 7.7%
・イオンモバイル 6.7%

この中で、LINEモバイルはSoftbank小会社でahamo対抗のLINEMOに移行しますので、そこだけ例外ですが、残った事業者については3GBくらいの音声付きプランが2,980円よりかなり安くなっているので、まだこうしたニーズがMVNOにはあるのではないかと思われます。

ただ、Rakuten UN-LIMITでは3GBまでの利用で980円(1GB未満だと一回線目は0円)というプランを2021年4月からスタートさせますので、楽天のエリアが整ってくると、これまでMVNOで安く契約を維持してきた人も楽天に移ってしまってMVNOがジリ貧になってしまう可能性があります。それでもまだ、楽天の回線よりも大手キャリアから借りた回線の方が安定していると思われますので、現在は楽天モバイルと同じくらいの料金で頑張れば、すぐにはユーザーは動くことはないと思われますが、単にプランの安い料金だけを考えていても、大手のサブブランドがさらに安いプランを出してきたら(すでにUQモバイルの「くりこしプランS」の月額1,480円は低速でも最大300kbps出るので動画・ラジオ・音楽もそれなりに楽しめる分相当インパクトがあると思いますが)、MVNO自体の旨味が無くなってきてしまいます。

そこで、各MVNOでは料金だけでない様々な特徴を出そうとしないと、なかなか残ってもらえないのではないかと考えたところは、様々な特徴を出してきています。私が考える各社の特徴については以下の通りです。(上のリストにはない日本通信についてもその特徴を紹介します)なお、私自身の知識の偏りで、全ての特徴を網羅しているわけではないということを最初にお断りしておきます。

・mineo
低速スピードが200kbpsでなく最大500kbpsになるオプション有
消滅する高速クーポンをタンクに入れると制限があるものの出すこともできる
会員同士のコミュニケーションが活発
「ゆずるね。」で昼間10日間/月利用を控えると夜間のみ高速での利用可
アプリから高速と低速の切り替え可

・OCNモバイルONE
ドコモ系列での安心感
SMS送信が月内5通までは0円
プレフィックス通話の通話無制限定額「OCNでんわ完全かけ放題」あり
主に音楽配信サービスに適用される「MUSICカウントフリー」が無料で使える(申込は別途必要)
NTT西日本エリアで強いWi-Fiサービスが無料利用可
アプリから高速と低速の切り替え可

・BIGLOBE
auの資本が入っているのでau回線が早い
エンタメフリー・オプションでYou Tube・AbemaTVなどが見放題(音楽系・インターネットラジオも有)
低速モードはなし

・IIJmio(※2月24日の新プラン発表前に書いています)
インターネットの老舗企業なので安心して使える
eSIM対応のプランあり
アプリから高速と低速の切り替え可

・イオンモバイル
イオン内に店舗を持ち直接購入が可
ハードのみの購入も可
アプリから高速と低速の切り替え可

・日本通信
プレフィックスでない電話のかけ放題・70分間/月までのプランが有る
追加のデータ単価が安い
低速モードはなし

この他にも特徴のあるプランを持っているMVNOはあるものの、ahamoなどの大手キャリア系の格安プランや、Rakuten UN-LIMITのプランに対抗できるところとなると、データのみ月額500円前後くらいでSIMを提供するところがありますが、単価が低いと多くのユーザーが採算を取るためには必要になるので、なかなか難しいところがあります。現在は1GBから3GBの高速データと音声通話がセットされたプランが1,200円前後でMVNOでは提供されていますので、このくらいの月額で通信回線を維持したい場合にはここに挙げさせていただいたMVNOについては何とか残るかも知れませんが、他の業者については、別の事業で安定した利益を出しているようなところでないと、いつ事業を止めたり他社に身売りしてしまうかわかりません。

ただ、身売りになればその身売り先がどこかによってはかえって契約していたメリットも出てくるかも知れないので、今回紹介したMVNO以外のところに入っている方でもその価格やサービスに不満がないようであれば、無理をして切り替える必要はないと思います。身売りした場合、いつまで同サービスを提供してくれるかという問題もありますし、急に回線が止まってお金だけ引落されるような事はないとは思うのですが。

個人的に危惧するのは、この流れとともにMVNOの淘汰が進み、MVNOの数自体が少なくなってしまうと、ある意味突拍子もない少ないユーザーしかその恩恵を感じられないプランは出てきにくくなってしまうという点があるということです。様々なオプションを付けなくても元々それなりにスピードが出るようなプランが安くなっていけば、MVNO自体もいらなくなってしまう可能性もありますが、やはりMVNOには頑張ってもらって格安にスマホを使いたい人たちの希望であって欲しいという点もあるのです。そんなことを考えながら、まずは2月24日にあるIIJmioの新プランの内容発表を期待して待ちたいと思います。


カテゴリー: モバイル関連コラム | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

スポンサーリンク

コメントを残す