ライフラインはどれが止まったら一番しんどいか?

先日、新潟県と山形県の県境で地震が起きたばかりですが、災害というのは地震だけではありません。6月に入って大雨になれば洪水や土砂崩れの危険性が増しますし、逆に雨が降らなければ渇水による一部時間の断水ということも可能性がないではありません。落雷による停電が長びくこともあるでしょうし、停電とは関係ないとされるガスについても、湯沸かし器を使うには電気が必要ですし、供給に問題がなくても使えなくなる状況というものも考えられます。

また、電話・インターネットが全く使えなくなったらそれはそれで大変です。情報を受けるだけになり、自分の欲しい情報がいつでも入手できなくなるかも知れないので、情報難民が多く出る可能性もあります。さらに、逃げ道を確保する中で道路が通れなくなってしまったらその場にとどまることになってしまいます。そこで、今回は「電気」「ガス」「水道」「通信」「交通」というライフラインの中で、特にどれが日常生活をしていく中で欠けたら大変なのかということを考えていきたいと思います。

まず、ここで挙げさせていただいた5つのライフラインのうち、家庭内の生活ではほぼ使うと思われる「電気」「ガス」(オール電化の場合は使わず)「水道」と、物流や移動に使われる「交通」と「通信」という前者3つと後者2つは分けて考えた方がいいのではないかと思います。

まず、後者2つについて思うところを書いていきたいと思います。交通網が遮断されれば自ら他の地域に移動することはできなくなり、外からの支援物資は入ってこなくなります。また通信網が遮断された場合には同じく口コミ以外の情報は外から入ってこなくなり、正しい情報を求めて今以上に地域は混乱すると思われます。ただ、支援物資を運ぶ分だけの道路は最優先に確保されるでしょうし、電話網がだめでも業務用の無線などで役所には最低限の情報が入ると思いますので、地域の中で避難をしている場合にはとにかく足で情報を取りに行く気さえあれば何とかなる部分はあります。食料については交通網が復旧するまでは災害用として自治体などが備蓄している分もあり、そうした情報を足で取りに行けるなら、用意するのはまめに燃料を使わずに走り回れる自転車の用意くらいがあればよく、復旧ができるまで何とか我慢ではないかと思われます。

次にエネルギーのうち「ガス」ですが、今回の新潟・山形の地震でも家庭のガスが使えなくなったということがニュースになっていました。これは、実は私の家でも経験があるのですが、ガス自体の供給は問題なく行なわれていても、メーターに付いている装置によって、大きな揺れを感じた際に強制的にガスの供給をストップする安全装置が付いているということがあります。計器類がガス漏れの異常を検知しなければ(ガス管にヒビが入っていたり切れていないかの確認も必要)、安全装置をボタンを押すことでリセットして、すぐに再びガスを利用することも可能になると今回の地震を受けて地元のガス会社がアピールに必死という感じもありました。そういうわけで、日常的にガスを使っている方はもし地震の後でガスが使えなくなった場合には、まずはガス漏れがないか点検した上でメーターのリセットボタンを押すことで手間を掛けずに復旧できる可能性がありますので、その事を心得えておきましょう。

次に、エネルギーのうち「電気」というのは全く使えなくなったら確かに大変です。昼間はそれでもいいですが、夜になると暗い中では動くことも難しくなりますし、オール電化の家の場合は調理もできなくなってしまうので、ある程度の事前準備などの対策は必要になってくるでしょう。

基本的には「明かり」「調理用」「情報収集用」「暖房・冷房」くらいに分けて代替え案を考えておくということになるかも知れません。このうち「明かり」はランタンや懐中電灯、「調理用」にはカセットコンロ・キャンプ用の調理器具、「情報収集用」にはワンセグ付きのスマホを動かすためのモバイルバッテリーがあります。モバイルバッテリーは先日のブログで紹介したように日常的に使っているものが複数あればスマホだけでなく、バッテリーに直接接続できるLEDライトもありますので、やはり用意はあった方がいいです。また、停電が続く場合の事も考えて昼間に天気が良ければ充電できるソーラーパネルを使ってモバイルバッテリーを充電できる方法について考えておくのもいいでしょう。

問題は最後の「暖房・冷房」のうちの「冷房」です。暖房は布団や寝袋の中に湯たんぽを入れるだけでも何とかなるかも知れませんが、さすがに個人レベルで部屋にあるエアコンを常時運転させるということは無理があります。電気がなければ氷も作ることができませんし、この点だけは割り切りが必要でしょう。最近出てきたDCモーターの低電力でも使える扇風機と小型のコンセントのあるポータブルバッテリーを併用して利用し、濡れタオルで体を拭いて涼しさを感じるようにするとか、場合によっては蚊帳を吊るして風通しの良い環境の中で暑さをやり過ごすぐらいしか解決策が思い付きません。ただ、風が通るならそれでも体感温度は下がりますので、ぎりぎり工夫できる範囲なのではないかと思います。

個人的に恐らく一番困るのが最後の最後になりますが「水道」の問題ではないかと思います。飲み水については給水車がやって来る時に並んで、自分の家族が使う分だけの飲み水を確保すれば大丈夫だと思うのですが、その他の日常的に使う水についての問題は山積することになります。食器洗いの水やお風呂の水、さらに洗濯の水をどうするのか。でも一番人間が生きていくために大切なトイレをどうするのか、過去の大きな災害でもトイレが自由に使えないことで体調を崩した方も多いはずです。地震のような配管が破損しているような場合は、有無を言わず家庭内のトイレを使用中止にしないと後の処理が大変になりますし、単なる断水の場合でもそれなりに大変です。

便器の製造をしているメーカーであるTOTOのホームページで断水の際にバケツでトイレを流す場合の方法があったので見させていただきましたが、勢いよく流すためにはバケツに水を6~7リッター入れたものでまず流し、きちんと流れた後で2リットルくらいの水を元の水位になるくらいまで入れるというような説明だったので、私達が普通に使っているトイレを流すという行為と同じことをバケツでやる場合は一回につきだいたい10リットルもの水が必要になるということになります。その水をまさか給水車からもらってきた水で充当するわけにもいかないでしょうから、家の近くにある川や池にいちいち汲みに行くという、まさに前近代の日本のような大変な仕事になってしまいます。

日常的に水洗トイレ以外のトイレを使っているならいいのでしょうが、水洗トイレが使えなくなったからといってバイオトイレを作ったり、ポータブルトイレを買ってきたりしてもその処理が大変になることにもなります。やはり問題意識を持っている方は、常に雨水を蚊がわかないようにタンクにためておいていざという時に使えるようにするとか、水洗トイレだけでなく他の形式のトイレについてもすぐ使えるように考えておくというのがいいでしょう。ただ、雨水では食器洗いや洗濯に使うには気になるでしょうし、その場合は紙の食器でしのぐとか、普通の食器にラップを巻いて使うことで洗い物を出さないようにすることは可能ですが、洗濯はやはり水を使いますので、漬け置きして少しの水で洗濯するようにしたり、頻繁に変えたい下着については、これも使いすての紙の下着で凌ぐとかしないと仕方がないのかも知れません。しみじみ日々蛇口をひねると出てくる水道というものは有難いものだなあと思います。

ここまで一通り見ていくと、何も準備がない状態で一番しんどそうなのが「水」で、「電気」については夏の寝苦しさをどう解決するのかというのがライフライン遮断時には鍵になっていきそうです。これからの時期、しっかりと水分を補給することは大切ですが、同時にもしトイレが使えない場合にどう対処するかということも頭の片隅には入れておくようにしたいものです。


カテゴリー: 防災コラム | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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ライフラインはどれが止まったら一番しんどいか?」への4件のフィードバック

  1. ケータイオタク

    地震後復旧は電気、ガス、水道の順になる事が多いと思います。電気の普及は割と早いですね。水道は地区によって大差がありますね。同じマンションでも水道本管の違いで復旧の早い建物もあれば遅い建物もありました。
    東日本大震災では自分の住む番館は翌週水曜日には復旧しましたが、他の番館ではかなり遅れた番館もありました。
    復旧も早かったこともあり、事前に準備しておいた水でトイレの使用には困りませんでした。(2Lボトルで60本程度用意)、ガスもボンベ式を用意していました。
    短期間であれば電気があればある程度対応出来る。しかし3月で暑くなかった事は幸いでした。
    トイレの問題は大変ですね。今では簡易トイレなども準備するようにしています。飲み水は普段から災害対策も兼ねてサーバーを利用しています。
    可能な限り準備しておく事で違いは出てきますね。以前神戸に住んでいた事もあり、阪神大震災を見て備えていました。当時は見覚えのある街並みが被害を受けているのには衝撃を受けました。その後神戸を訪れた時には自分の住んでいたマンションは新耐震基準だった事もあり、無事でしたが周囲の家はほとんど立て直されていました。

  2. てら 投稿作成者

    大きな地震が身の回りに起こった場合、季節的にいつ起こるかということでその後の避難生活に影響が出るというのはその通りですね。

    ただ、どちらにしても常に最悪の状況になることを考えながら準備をしておくと、現実にはその想定を超えるような問題が起こったりするので、自分も含めて様々なパターンから学習し、対応する事を増やしていく必要というのも感じています。

    今回のテーマである「水」の確保ということでは、「飲み水」と「その他の用途の水」に分け、自宅のトイレが使えるが断水しているような場合は、いざという時には近くの川の水でも汲みに行こうかとも考えているのですが(^^;)、その場合にはこぼさずに運べるタンクも用意しなければならないし、色々と悩むところです。日本では歩いて水を運ぶような場面は災害時以外にはないので、本当は紐を通して引っ張るだけで地面をならすローラーのように水を運べるタンクがあればいいなと思っているのですが。

  3. ケータイオタク

    あと役に立つのは水のいらないシャンプーでした。
    灯油用ですが、タンクにローラーがついているものもありますね。ただ場所をとるので折り畳み式の台車でも良いとは思います。洗い物を減らしたので使い捨ての紙のコップやお皿も準備あると便利でした。サランラップで食器類はカバーしておくと洗う手間が省けますね。

  4. てら 投稿作成者

    以前ブログでも紹介しましたが、「水のいらないシャンプー」の代わりになるものとして、粉の「ベビーパウダー」を髪の毛にまぶし、櫛をかけると油分が抜けるようになります。ラップは常に未使用のものを一本ストックしておくのがいいでしょうね。紙コップは100円ショップでまとまった数が入手できますので、あると何かと便利です。

    水など重いものの運搬用には、ゴムのタイヤが付いた台車があると便利ですが、コンパクトに収納できないのが残念です。

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