現行ラジオの寿命に関する話

 先日、すでに見ることができない地上波アナログ放送のチューナーが載った車を運転する機会がありました。機能としては以前の地上波アナログ放送が見られるものなのですが、当然ながら今は使えません。チューナーの機能に問題がなくても使い道がなければそれまでだということなのですが、同じような状況が一部のラジオについても起こる可能性が現実のものとなってきました。

 昨日の一部の新聞報道によると、政府・総務相の諮問機関・電波監理審議会は3月12日、難聴取・災害対策を条件にして、AM局にもFM放送の免許を出せるよう規制緩和することを認める答申を出したとのことです。この答申を受けて、ニッポン放送とMBSラジオは、早ければ来年中にもAMとFMで同時に同内容の放送をスタートする可能性があると報じられています。

 以前から、大きな送信局で広いエリアをカバーするAM放送のコストがAMラジオ各社の経営を圧迫しており、単に収支の点だけでいうと、小規模な送信施設で低コストが実現できるFMへの完全移管をした方がいいという話も出てきていました。ただ、FM局はNHK、民放の他に多くのコミュニティFM局が電波を出しており、既存局がFMを使う場合、現在の周波数の中では入る隙間がありません。そこでAM局側が注目しているのはテレビ放送が地デジ化されたことによって空いた「V―Low」(VHF 1~3ch)と呼ばれる電波帯です。周波数で言うと90MHz~108MHzで、この中に既存局が入り、AM局との同時放送を行ないたい意向のようです。

 現在でもビルが立ち並ぶ場所ではAM放送が入らない状況にあるところが多いので、クリアな音声でステレオ放送のAM局が90MHz~108MHzに入れば、その周波数帯をカバーするラジオがあればインターネット環境がなくても気軽に聞くことができます。しかし、今売られている現行のラジオの中には、FMは従来の76MHz~90MHzまでというものが多いのです。すでに高性能の録音機能付きラジオや、手回しハンドルや照明、スマートフォン充電機能まで付いた災害対応のラジオを買ってしまった人の中にはこういった流れの説明を受けないまま90MHz~108MHzが受信できないラジオを持っている方が少なくないのではないでしょうか。

 来年になって実際にニッポン放送やMBSラジオなど大きなAM局がFMによる放送を開始すると、当然90MHz~108MHzが聞けるようにマイナーチェンジされたラジオが発売されるでしょうが、その中で現行機も販売が継続されるでしょう。安い値段で叩き売られる場合はわかりやすいかも知れませんが、売る方もこの事情をわかっていない場合、ある意味不当な価格で90MHz~108MHzが聞けないラジオを買わされるケースも出てくると思われます。

 実際のところ、完全にAM局がFM局に鞍替えするかどうかもわかりませんし、地上波アナログテレビのように全く使えないゴミになることはありませんが、もし現行機を購入する場合は今の価格よりかなり安くなった段階で買わないと後で後悔すると思います。本来はメーカーが「TV 1~3ch」という表示のあったアナログ選局のラジオを「90MHz~108MH」という表示に変えて製品として出し続けていればこのような混乱は起こらなかったのではないかと思うのですが、さすがに当時はデジタルラジオ放送を行なうと今までのラジオは使えなくなるという話もあり、メーカーのみを責めるわけにもいかないでしょう。ただこうした状況の変化によって不利益を被るのはユーザー側になってしまうので、特にこの時期、消費税が上がるからと急いでラジオを購入したいと思っている方は、こうした事情も考慮してみてください。


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