「便利」を我慢する事で得られるもの

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 以前から手に入れようかどうしようかとずっと考えていたものに、灯油を使って安定した火力を得られるキャンプ用のバーナー、吉川製作所の「マナスルストーブ」があったのですが、先日ついに注文してしまいました。サイズは一番小さい「MANASLE96」ですが、この製品はそんなに安くありません。定価で1万5千円+消費税で、シーズン終わりには売り切れてしまいます。小さいメーカーが必要とされる分だけ作っているので仕方のないところではあるのですが、タイミングを逃すと消費税分確実に高くなってしまうことはわかっていたので思い切って購入してみました。このストーブは構造が単純なため壊れにくく、保守パーツも簡単に入手できるため同様のストーブを30年以上使っている人もいるほどのロングセラーなのですが、扱い方に少々大変な所があります。

 一般的な灯油を使った石油ストーブは、芯に点火しているので簡単に火が付けられますが、マナスルストーブの場合は灯油を気化させたものに点火するため、「プレヒート」という作業が点火の前に必要です。アルコール燃料や固形燃料などを燃やすことでストーブを温め、さらにポンピングをしてタンクの内圧を上げることで灯油が気化されて燃えるという仕組みになっています。このプレヒートにかかる時間だけで、ジェットボイルというキャンプ用ガスを使った湯沸しセット(セット品でマナスルストーブより安価に購入できます)なら十分お湯が沸かせてしまいます(^^;)。もしプレヒートを失敗したら、また最初から作業をやり直すことになり、慣れないうちは灯油に火を付けるところに行くまでに、相当ストレスが溜まることになるでしょう。

 単にお湯を沸かしたり調理に使いたいというだけなら、ガスを使う機材を使えば何の問題もなくできてしまうことを時間をかけてなぜやるのかと疑問を持つ方もおられるでしょう。それが趣味なのだと開き直る人もいるかも知れませんが、私の場合は少々違います。それは、現在の日本で売られている灯油の特徴と関係があります。

 一般的にキャンプ用の燃料というのは専門ショップやホームセンターなどで購入することが多いと思いますが、ガス缶については100%が使い捨てになります。中には詰め替えをして同じ缶を使い回している方もいるかも知れませんが、その場合でも詰め替え元の燃料が入っている缶は使い終って空になったらゴミになってしまいます。アルコール燃料やホワイトガソリンについても同様で、実は白灯油も専門店では小さな缶入りで売っていますが、灯油を使うストーブを使う方のほとんどは、割高のこうしたパッケージを購入する人はいないでしょう。日本における灯油の販売方法については、実は改めて考えるととてもめずらしい「容器を持って行って中味だけ買ってくる」販売スタイルが主流になっています。昔はお酒を購入する場合、徳利を酒屋さんに持って行って買うということもあったようですが、今はさすがにそんな販売スタイルを取っているところはないでしょう。パッケージがなく中味だけという事で、最近円安の影響で高くなったと言われていても、1リッターあたり100円前後で手に入ります。冬の間は暖房用のポリタンクに入っているものから補充すればいいでしょうし、夏には容量少なめのガソリン携行缶に入れてもられば日本全国どこでも安価に入手可能です。個人的にはパソコンやタブレット端末の電源としてエタノールを使った燃料電池が普及し、現在の灯油のように携行缶に入れてもらえるような販売スタイルが一般的になればアルコールを使ったストーブを中心に使うというのもありかなと思っているのですが、現状では液体燃料でパッケージのゴミを出さない地球環境にやさしい燃料というのは灯油が一番のように思います。

 そのかわり、灯油をメイン燃料として使う場合には最初に書いたような扱いのめんどくささを我慢出来るだけの心のゆとりが必要になります。後の処理まで考えなければコストと扱いやすさの点からカセットガスの使用がベストなのかも知れませんが、ガス缶を車の中に放置することでの危険さもありますし、旅先でガス缶を購入して使い切った場合でも簡単に道の駅や高速サービスエリア内のゴミ箱に捨てるわけにはいかないでしょう。灯油を使ったマナスルストーブは相当大きな音を出して燃えるため、とても車中泊の合間のお湯を調達するためには使えませんが、私はそれでもいいと思って灯油のストーブを選択しました。

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 私がマナスルストーブを購入したもう一つの理由が、たまたま今売られているマナスルストーブ専用のヒーターユニットである「マナスルヒーター」の存在です。容量の少ないマナスル96でも200ccの灯油で約1.5時間(カタログ値)燃えてくれますので、寒い夜でも少ない燃料費で周辺を暖かくできます。災害時の暖房器具として、暖まりながらこのヒーターの上にやかんをのせてお湯を沸かすなんてこともできます。日常のレジャー用兼災害用として、大事に使いながらいざという時に備えたい逸品ではないかと私は思いますが、いざという時だけに使うだけというのは勿体無いので、今後は活躍の場を増やすような行動もしていきたいと思っています。


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