電子ブックリーダーは買いなのか?

 昨日、こちらのアドレスにアマゾンの電子ブックリーダーkindleについての案内メールが入ってきました。他社からもさまざまな電子ブックリーダーが出ていますが、以前からもさまざまな電子ブックリーダーが出てもそれほど普及したとは言いがたい今、あえてこういったものは普及していくのでしょうか。

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 実は以前、そうしたものの一つ、パナソニックが出した電子ブックの「シグマブック」というものを投売り価格で入手したことがあります。本体は見開きになっていて、電池を抜いても表示していた文や絵などはそのまま表示できる電子ペーパーを備えています。個人的に購入しようと思ったのはその電源周りでした。単3電池2本で数ヶ月使え、もちろん充電式のニッケル水素電池でも動きます。写真のものがそれですが、電池を入れれば以前導入していたデータを全て読めたのも、乾電池を電源に使っていればこそでしょう。メモリについてはパナソニックらしくSDカードで、これも簡単に今でも入手できます。しかし、この端末には致命的な欠陥があったのです。

 この電子ブックの扱えるファイル形式は独自形式のもので、pdf形式などは全く使えません。テキスト形式やビットマップ画像のファイルを読み込むことは可能ですが、そのためにはウィンドウズ用に作られた「ΣBookBuilder」というソフトが必要で、現在はシグマブック自体のサイトが閉鎖されてしまったためネット上からもソフトを入手することはできません。またSDカードに移動する際の著作権保護のためのドライバも必要で、現在ではそれも入手できないでしょう。恐らく中古でシグマブックの本体を激安で入手できたとしてもこれらパソコンでデータを扱えるための環境を再現することは不可能になってしまっています。ちなみにこの端末が発売されたのが2004年で、2006年には販売が終了、サポートのためのサイトも何の案内もなくページを閉じ、現在に至っています。

 このように、ユーザー側には全く関係ない仕様の変更や製品の発売の完了によって溜め込んだデータが全く使いものにならなくなる恐れがあるのが電子データであると言うことにもなります。ユーザー側で大切にデータを保管しておいたとしても、例えば将来においてpdf形式に変わる新しい形式が標準となった場合、果たして今どのパソコンでも読めているpdfファイルは確実に読めるようになるのかということについて、はっきりと答えを出せる人はいないでしょう。

 というわけで、私は保存する文字データは極力テキストデータ(拡張子が.txt)にし、音声ファイルで大事なものは音楽用CDプレイヤーで再生できるものの形にして保存するようにしています。以前はアナログテレビ番組の頃にはビデオCD形式(DVDプレーヤーで再生できる音楽用CD-Rに書き込める規格)にしていたのですが、最近では録画した番組のコピー自体ができないので、テレビ録画についてはDVDに焼くのもめんどくさいし、今後のメディアの変化によってはそのDVDもどうなるかわからないので長期保存は諦めるしかないのかなと思っていますし、デジカメで撮影した動画はどうしようか今だに考えています。

 話は電子ブックリーダーに戻りますが、スキャナで取り込んでpdf形式にしたものは表示できるものの、画像形式で取り込んだものを電子ブックの画面できれいに表示させるためには多少のファイル編集が必要な場合もあるようです。ダウンロード販売で購入するにしても、原状の独自形式ファイルを買わせる端末が乱立する状況ではお互いの電子ブックに互換性を求めるのは無理な話で、淘汰される側の電子ブックを使っていた場合はシグマブックのような粗大ゴミと化してしまうでしょうし、とても私はこうしたものを使って電子書籍を購入する気になれません。端末の価格が安いので、テキストファイルやpdfファイルのリーダーとしては魅力があるかも知れませんが、専用電池がへたってきたらゴミになるのは同じなので悩むところです。もし、シグマブックのように見開きで電池は普通に単3とか単4で数ヶ月動くようなものであればスマートフォンで読んでいたものを専用端末に移してもいいかと思えるのですが、そんな都合のいい端末は恐らく今後も出ないでしょう。電子ブックが成功するためにはユーザーが直接お金を支払う方法が確立される必要はあるので競争している状況なのでしょうが、今出ている電子ブックでさえ5年後にどうなっているのかすらわからない状態でこれから紙の本を買わずに電子書籍だけでライブラリを揃えようとする人たちが出てくるのかどうか。お金を無駄にしたくない人はハードの購入費用が多少高くなってもタブレット端末で自炊したものやフリーの電子ブックで読書をするようにした方がいいでしょうし、今後読み返すことが必要になりそうな書籍については、できるだけ紙の形で購入しておいた方が将来読めなくなるかも知れない危険を回避できると思います。そういう意味において、決して企業の論理で淘汰されない紙の本というのは、ユーザーよりのメディアであると言えるかも知れません。


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