震災の影響でいろんなものが品不足になって、人間の本性が現わになったというか、見ていておぞましいものもいろいろあります。電池や水、ここでも紹介した災害用ラジオを高値で売ろうとする輩というのは、経済が正常に戻ったら商売ができなくなることを見越してそれでもやっている感じがします。需要が上がれば価格は高くなるという事は仕方ない点ではあるものの、日常生活において消費されるだけで残らないものに価格を上乗せして売るというのは、お金が無い人は生きていけないという事を意味するのではないでしょうか。
今回の震災で改めて思ったのですが、ガソリンというのは本当に日々の生活の中で無くてはならないものだということです。阪神淡路大震災や中越地震ではガソリンは何とか手に入ったので、避難所に入らないで車中泊をする場合でも、寒さを凌ぐためにアイドリング状態にしてヒーターをかけるという手段が使えました。しかし今回の震災では今だにガソリンの入手が難しく、スタンドの開店前から店の前に並び、長時間車の中で車中泊をしながら待っている状況で、車内で暖房器具を動かしたことによる中毒死するというパターンが何度も起こっています。人々はそこまでしてもガソリンが欲しいのです。現在かなりガソリン価格が上がっていますが、お金の問題ではなくとにかく売ってくれれば価格に関係なく買わざるを得ないという所にまで多くの人達が追い込まれています。
そうした状況を見た上でなのか、政治の世界ではガソリン高騰時の減税特例の廃止を検討しているのだそうです。経済財政担当大臣がそうした発言をし、今まで政府のやる事
全てに反対してきた野党の自民党もこれには賛成の方向なのだとか。ガソリン高騰時の減税特例というのは、ガソリンの値段が3カ月連続で1リットル当たり160円を上回った場合、ガソリン税の上乗せ課税を一時的に停止するというもので、当初ガソリンの暫定税率を廃止することができず、妥協の産物として生まれた経緯があります。
話はガソリンに関する税金の事ですので、東北地方だけ除外できたとしても、今はもう東北から全国の色々な所に疎開してしまっている震災の被災者を除外するような事は無理でしょう。まだ日本赤十字社の義援金の使い道も明らかになっていませんが、被災者に渡されるであろう善意のうち、相当の額が税金として収められる事はこのままでは確定してしまいます。本当にそんなことになってしまっていいのでしょうか。
もし本当に減税特例が実施されないまま廃止されるとしたら、私には政府のやる事が、被災者を鞭打つ火事場泥棒のように感じられてしまうかも知れません。根本的な解決に向けては、世界中の人たちの必需品である石油や穀物までマネーゲームの材料とした一部の投機筋を何とかするために考えを巡らせるべきでしょう。日々のパンが食べられない国々と共闘し、世界の国々にアピールする事こそが重要だと私には思えます。すでにアメリカは原油の輸入を中東に依存する体質を変えるために、代替エネルギーであるバイオエタノールなども検討しているらしいですが、そうしたニュースにより市場が動くでしょうし、その結果とうもろこしを主食にしている人たちの食事はどうなってしまうのか、考えただけで気が重くなります。
今回の件でもう一つ気になることは、テレビはこのような増税につながるニュースを私が確認させていただいた範囲ではほとんど流していないように思えることです。私のたまたま見た民放のニュース番組では、自動車産業などを引き合いに出し、復興のためにはお金がかかるということを殊更に強調していました。もちろん、お金を出せる人が復興のためにお金を出すことはいいことだと思います。しかし、税金による徴収というのは平等のようでいて金銭的に余裕の少ない人たちの生活をじわじわ圧迫していきます。被災地で苦しい生活をしている方々のためにも、政府には結果として弱い者いじめになるような政策は避けていただきたいものです。