キーボード入力に代わる日本語入力は「視線入力」という方向も

来春社会人となる新卒者の中にある問題について、また今年も新聞が報じていました。現在の新卒にあたる年齢の人たちは、物心がついた時からスマホが普通に使えるようになっていたので、インターネットを全て手の中のスマホで利用していたことから、パソコンが使えない採用者もいるという話です。こんな状況については一年のうちで新卒者の研修にあたる期間に出てくる話題なのですが、少し前なら少なくともパソコンを使ってインターネットを楽しんだりレポートを書いたりしていれば、研修はすぐに実践的なところから入れるのですが、キーボードに慣れ親しんでない人が多いと、それこそ両手を使ったタッチタイピングから教えなければなりません。

就職活動中のメールやSNSによるコミュニケーションについては秀でている世代の方々であるだけに、業務に問題ないとして採用し、新卒者もスマホは相当使いこなしていてもパソコンを使っての文書作成やエクセルによるデータ入力やその応用については業務としてこなせる水準に達していない場合もあるわけです。

しかしながら、時代はその時点からさらに進化していて、定形の業務用の文書であれば人間が作らずに基本的なひな形を利用し、さらにAIを利用することでコンピューターが勝手に小説まで書いてくれる時代になっています。機械の手による小説が果たして面白いのかという話は置いておくにしても、新たなテクノロジーの進歩によってキーボードを使わずにパソコンで文章を書くことはすでにできています。

その場合に多くの人が思い付くのがAIスピーカーの登場とともに脚光を浴びた「音声入力」でしょう。私のところにあるアマゾンのECHOスピーカーあたりでもきちんと使い方さえ覚えておけばそこそこの動きをしてくれます。ちょっと前にはここまで音声入力は必要だろうかとも思ったことがありましたが、普通に音声入力を使えるデバイスが安く提供されることで、社会的にも大きな意義があると言えます。

各社のAIスピーカーを使えば、テレビのリモコンの代わりにもなるものもありますので、視覚障害の方が普段使いにするものとしては、好きな時にネット検索した結果を聞いたり、今の時間を確かめたりが音声だけでできてしまい、それが特別な料金を掛けることなくできてしまうのですから、いい時代になったものです。

ただ「音声入力」だけでキーボードの代わりになるかというと、たとえクセのある声を100%認識できる技術を作ったとしても、多くの人がいる部屋の中でそれぞれが音声入力を使うことになればうるさいことこの上ないですし、モバイル環境で音声入力をしながら文章を作成するというのはさすがに社会的にマナー違反を問われる場合もあるでしょう。

ですからスマホやタブレットの画面を使ったフリック入力やキーボードを外部入力装置として使うことになるのですが、さらに今利用されている技術を使えば、音を出さずに効率的に文字入力をできる環境を作ることはそこまで難しくはないと思います。それが表題に出しました「視線入力」です。

元々はこの方々はアナログな方法としてご存知の方もいるかも知れません。体を動かすことができないALSや脳性麻痺の方がご自分の意志を他人に伝える方法として、五十音の書かれたパネルを用意し、補助する方が意志を確認したい人の目を見ながらパネルの上を移動していきます。どの文字を選ぶかは目で合図し、一文字ずつ目で選ばれたカナを拾い上げたり、「はい」「いいえ」などはパネルに別に表示しておけばさらにコミュニケーションは楽になります。

改めてこの「視線入力」できる機器について調べてみたところ、画面を見るだけでマウスのカーソルが動いて文字入力を行なったり合成された音声を使って会話もできる専用の端末が作られているようです。ただこれを、限られた人だけに使わせるようにせず、キーボード入力に代わる入力装置として、市販されるパソコンやスマホ、タブレットでも使えるようにできれば、文字入力における革命になる可能性もあると思うのですが。

というのも、視線をスマホやタブレットの画面に移すだけでカーソルが文字盤の上を移動できるようになれば、50音の一つ一つを選んで入力できるわけですから、日本語をローマ字に変換して入力することもないので、入力する文字盤に工夫をすれば、日常的に日本語を書いている方なら基本的な研修だけを行なえば、タッチタイピングを習得するよりも早く実用的な日本語入力能力を持てるようになるのではないでしょうか。

さらに、音声入力のように機械による認識ではなく文字盤の上の文字をそのまま選び、漢字に変換するだけですから、認識ロスを起こすことは基本的にはありません。あとは慣れた時にどのくらいのスピードで入力できるかですが、視線の移動だけでカーソルを思った場所に移動できるような技術ができれば入力の方法として広く使われる可能性も出てきます。

もちろんこの視線入力は長く続けていると目が疲れそうですし、音声入力やキーボード入力と併用しながら使うのがいいのだろうと思うのですが、本体を手で操作しないでも文字入力および端末の操作ができ、さらに特別な訓練を必要としなくても何とかできそうな視線入力が今後一般化されれば、私たちの生活だけでなく今までなかなか自分の頭の中だけに留めていて自分の意見を言えなかった体を動かせない難病の人にも安くハードとシステムを提供できるようになります。在宅ワークで完結する仕事であれば、もしかしたらALSの人が今までパソコンを使ったことのない新卒の人より仕事をこなすようなこともできるかも知れません。個人的にも外にいてキーボードを出せないような状況でさっと長文を書こうと思える普及価格のスマホやタブレットが出てくれば、さらに世の中も変わってくるのではないかと個人的に期待しています。


カテゴリー: モバイル関連コラム | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

スポンサーリンク

コメントを残す