ここ数日、令和6年能登半島地震について、自宅から避難している方に、恐らく避難所と思われる所で取材している映像を見ていましたが、その様子が2011年の東日本大震災の時の状況とあまり変わっていないことに愕然としたのは私だけでしょうか。
たまたま映った避難所では例によって床に直接座って、酷い寒さに耐えながら薄手のアルミシート(これは避難所で支給されたものだと思えました)で体をくるんでうずくまっている人の様子が本当に痛々しく思いました。
同じ場所で、車の中で避難している人にもインタビューしていましたが、なぜ車の中に(車は普通車で車中泊をするために適したものではなさそうでした)いるのかの質問に、とにかく寒いからと答えたことも、自分は何年前の罹災状況を見ているのか? と思ってしまうほど、現在の国内の避難所の状況が良くないところも多いのではないかと思ってしまいました。
これは何も今回の地震が起きたから書くのではありません。以前から、車内をフルフラットにできたり、車自体がキャンピングカーでベッドが完備されているような車でない場合、無理な姿勢で車中泊を続けると「エコノミークラス症候群」で、最悪の場合命の危険もあるということは過去の災害で避難したケースを見ていけば明らかです。何の予備知識もなく普通の車で車中泊をすると、エコノミークラス症候群になる危険だけでなく、車内でストーブを使うなどすると、一酸化炭素中毒で命の危険も出てきます。それでも人々は車中泊を選ぶ傾向にあるのですが、その理由について考えていくと、今につながる災害時の避難所のあり方がおぼろげながらわかってくるのです。ここは、その理由について自分なりに想像する事を箇条書きにしてみます。
・プライバシーを保ちたい
・ペットや赤ちゃん・高齢者などと一緒なので避難所に入れない
・避難所は寒い(暑い)ので
・多くの人が集まる場所での避難はストレスになる
・犯罪に巻き込まれる恐れがある(特に若い女性がいる場合)
・避難所に便利な道具を持ち込んだ場合に他人の目が気になる
・貴重品の管理が大変
ぱっと思い付くものを書いてみましたが、日本の避難所というのは災害直後は冷たい床に毛布やアルミシートのみでプライバシーもなく、弱者への配慮もなかなかできません。避難所というのは今回のような地震の場合だけでなく、台風や集中豪雨でも避難所が開設されるので、もう少し事前に快適に避難所で過ごせるようなものを用意できないのか? と思うのです。
まず、今回の場合で言うと体に掛ける毛布やアルミシートだけでなく、床からくる寒さをシャットアウトするキャンプ用のアルミシートだけでも用意してあると、地べたに直接座ったり寝たりするよりも、かなり寒さの感じ方が違います。たったそれだけの用意もしていない避難所であれば、人々は無理な車中泊へと移行してしまい、結果として災害で直接ではなくても、間接的に体を壊したり、最悪の場合には命を落とすような状況にならないとも限りません。
以前、避難所支援について罹災地域以外からその場で簡単に組み立てることのできる段ボールベッドを支援物資として送り、現在でも避難所の環境を整える取り組みをされている榛沢和彦氏のいた当時の新潟大学を訪問したことがあります。その内容については、以下のリンク先で参照していただきたいと思いますが、果たして今回の地震によって住むところを無くしてしまった被災者の方に、このような装備をどこでも使えるようになっているのか。その点は私にはわからないのですが、東日本大震災から10年以上が経っているわけですから、早めにプライバシーの確保された安心して寝られる段ボールベッドを設置した避難所が当り前になって欲しいものです。
さらに言うと、単なるプライバシー確保だけではなく、ペット・高齢者・赤ちゃんがいても安心して使えるような場所を避難所の方で提供できるようでなくてはいけないでしょうし、もし避難所で若い女性に対しての暴行などを防ぐ目的で、鍵のかかるような女性専用のスペースを作るとか、トイレなどへの移動の際には現地スタッフが付き添うようにするとか、現地の警察と連携して通報窓口をきちんと作り、避難所への巡回を強化するとか、事前に考えておくことは山のようにあるものの、こうした点を一つずつつぶしていかないと人々は不完全な状況の中でも避難所の中でなく車内で生活することを選び、その結果血栓が原因で命の危険に見舞われるという事になってしまいます。
すでにキャンピングカーや大きなワゴン車を車中泊用に仕上げているなら、今の状況であれば避難所の駐車場に停めながら車の中で寝つつ、情報や支援物資をいただくような形での避難生活の方が今でも無難ではあるのですが、それだとそもそも車を持っていない人、持っていても車中泊に適さないばかりか健康を害してしまう恐れのある体勢でしか寝られない車で無理に車中泊を強いられるような場合には、相当のストレスを感じたままの避難生活になってしまいます。
災害だからそのくらいは我慢すべきというご意見もあるのかも知れませんが、そこまでお金を掛けなくてもみんなで知恵を出し工夫をすることで避難所において少なくとも健康を損なうことなく、ストレスも今より軽減できる生活を提供できるように行政は日頃からその方法について考えていただきたいと切に思います。今回の地震も今後多くの人がストレスを抱えることになるでしょうが、今後の対応次第により、状況は変わっていくと信じています。今後、地震の被害を受けた人たちが、何とか無理な車中泊へと行かざるを得ない状況を止めて欲しいと思います。