古谷三敏さんは大人がさり気なくウンチクを語るところに魅力があった

先日、漫画家の古谷三敏さんの訃報が入ってきました。漫画家としては現役で、これまでも「BARレモン・ハート」を連載中でした。この方は元々は手塚治虫さんのアシスタントをされていて、その後に年も近いからと赤塚不二夫さんとの共同作業(ブレーンとして赤塚さんの作品の作成にも関わっている)の中でご自身の漫画も出し、「ダメおやじ」や「手っちゃん」は雑誌掲載と同時に読んでいたものの、そこまでその時は夢中になって読んだわけではありません。

私がじっくりと古谷さんの漫画を読むようになったのは落語家についての楽屋話をじっくりと描いた「寄席芸人伝」からです。人物評伝が基本ですが、噺家の生きざまというのは漫画で描かれているからある程度はソフトに伝わるものの、自分が全く経験することのない世界の話がすっと入ってきて、読んだ後に何かしらの爽快感を感じる「大人のウンチク」が満載でした。

その後、「BARレモン・ハート」もかなり読みましたが、この漫画は「寄席芸人伝」のように酒にまつわるウンチクを散りばめながら、その中で登場人物の人間模様も落語の人情噺のように描かれていて、ドラマを楽しむだけでなく、純粋にお酒についての知識を得ることができる、とても実用的な漫画でありました。

私の世代というのは、大学生で成人に達したらコンパで一気飲みをして急性アルコール中毒で悲惨な事になるような飲み方を一部の人がしているような時代でした。サークルのコンパでは上級生が下級生を酔い潰すために、とにかく酒であればいいというような安い日本酒を一気飲みさせるようなところがありまして、私自身日本酒はしばらく匂いをかぐのも嫌でした。

ところが、この漫画を読むようになって、ウィスキーなどの洋酒の世界を知り、じっくりとお酒の味を楽しむことを知りました。漫画ではBARの話なのでどうしても洋酒が中心にはなるものの、連載の経過とともに日本酒や焼酎も出てくるようになり、ようやく飲まず嫌いだった日本酒にも美味しいものがあるということも、教えてもらえるようなところがありました。

漫画の中で古谷さんは決して強くメッセージ的にウンチクを語るのではなく、まさにBARで飲むマナーを教えるかのごとく、これから色んなお酒を飲みたいと思っている人に、お酒選びのヒントを与えてくれました。私自身この漫画から知ったお酒は多いですし、漫画を読むだけでなく、そこから実際に銘柄を飲んでみて、やはり古谷さんは本当にお酒が好きなんだなあと感じさせてくれる、まさに二度楽しめるようなところがありました。

そして、衛星放送のBSフジで「BARレモン・ハート」がドラマ化されるという話を聞き、シーズン1から見ているのですが、若干お酒の宣伝臭さを感じたものの、キャスティングには忖度なくかなり見ごたえがあって好きなドラマでした。現在はシーズン1がアマゾンプライムビデオで見られるようになっているので、改めて今回の訃報を聞きもう一度見てみました。

なかなか今の時代はゆっくりとBARでお酒を楽しむこともできずらいですが、ここしばらくは古谷さんのご冥福を祈りつつ、家での晩酌にドラマを合わせながらゆったりとした時間を愛でたいと思います。


カテゴリー: おくやみ | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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