こんな時だから考えたい「世界の人に聴いて欲しい日本の音楽」とは何だろう?

東京オリンピックの開会式のスケジュールが大変なことになっています。恐らくここまで直前に来て変更を余儀なくされたのは初めてではないでしょうか。今回、開会式の音楽を担当する人が直前に辞任し、会場で流す予定だった曲も流さないことになったということで、その部分を埋めるのは並大抵のことではないと思いますが、そもそも日本から世界にアピールできる場でどんな音楽を流すつもりだったのかということに興味がわいたので、今回のミュージック・ディレクターを務める田中知之(FPM)氏の音楽をSpotifyから聴いてみることにしました。

実際、田中氏が今まで出している作品がそのまま流れるわけではないと思うのですが、役職を辞任した小山田圭吾氏とのコンビでということを考えると、当初東京オリンピックを開催する時に言われていた「コンパクト」というキーワードで日本というよりも東京の限られた地域に根ざすようなダンス系の音楽という印象で、海外の方でも日本の音楽に詳しい方なら興味を示すのではと思えるものの、私たち日本国内で生活する人々の多くの方は「これが日本を代表する音楽か?」と思う人も出てくるのではないかと、まだ開会式も見ていないながらの印象ではありますが、そんな風に感じてしまいました。

改めて、東京オリンピックとは関係なく、海外でテレビを見る多くの人に「日本の音楽とは何か」という形で何が世界に向かってわかってもらいやすいのか? という風に考えてみると私個人的には以下のような内容が思い浮かびます。

・日本列島に大古の昔から住んでいる人の奏でていたと思われる音楽および、そうした存在にインスパイアされた音楽
・日本各地で伝わっている民謡およびそうした地域に根ざした音楽
・世界的にヒットしている歌手の楽曲や広く世界に認知されているアニメ・ドラマ・ゲームの音楽
・日本のテクノロジーによって実現した初音ミクおよび全編打ち込みの音楽(演出をCGで行なえば出演者がいらずに無観客化も可能?)

一般的に、土着的なものであればあるほど、その内容はオリジナルなものとなり、新鮮に海外の方々には映るのではないかという話があります。それは、いわば都会と田舎の違いでしょう。都会の音楽を聞き慣れた耳には、地方の民謡は古臭く感じる方もいるとは思いますが、今回の開会式が洗練された都会的な音楽を主に流すかも知れないのとは対照的に、田舎のオリジナリティが輝くこともあるかも知れません。

地方発の古くいものにオリジナリティが生まれる例として挙げたいのが、映画「ゴジラ」の音楽です。作曲者の伊福部昭氏は北海道の出身で、代表作にアイヌの方との交流の影響がうかがえる「シンフォニア・タプカーラ」があり、これを聴くとまさに「ゴジラ」の世界なんですね。ご本人はゴジラの音楽に再び注目が集まった際、トラックレースの一周遅れで先頭に立ったようだと語っていたそうです。

また、個人的に多くの人に聴いてもらいたいと思う楽曲に、冨田勲さんの「イーハトーヴ交響曲」があります。元々冨田勲さんと言えば日本のシンセサイザーミュージックの祖とも言える方ですが、楽器の音だけでなく歌声そのものも人間の声ではなく合成された音声で合わせたものを作ることは悲願だったそうです。初音ミクというボーカロイドの出現でそれが現実のものとなったわけですが、もし、事前に楽曲を準備して出演者を全てコンピューターグラフィック化して、冨田勲さんの音楽に合わせて動いたり歌ったりする作品が世界に向けて流れたら、それはそれで新型コロナに対抗するための手段として認知されただろうになと今さらながら思ったりします。

果たして本番の東京オリンピック開会式がどのように演出され、どんな音楽が流れるのかはわかりませんが、ここまでで多くの人の心の中に素直に楽しめない感情が生まれてしまったのではないかという心配もあります。そんな中で改めて、自分ならどんな音楽を世界に向けて発信したいかという話をするのも一つ大事なことなのではないかと思います。ここまで書いたことは、私自身車中泊の旅で日本全国の地方を回ったこともあり、都会的なものよりも地方の文化についての思い入れが探くなってしまいました。ただこれはあくまで私の場合ということなので、こんな時期だからこそ、皆さんなりの世界に向けての音楽とは何か考えてみるのもいいのではないでしょうか。


カテゴリー: 音楽コラム | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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