内需だけで世界一位でも海外で売れなければ

世界のスマホのシェアについて、それまで世界一位のシェアを持っていた韓国のサムソンに代わって、中国のファーウェイが逆転したということがニュースになっています。そのニュースによると、新型コロナウイルスの流行が中国国内で落ち着いてくる中で、中国での国内シェアが7割に達したファーウェイが中国だけでなく世界でも一位になるくらいの売上げを達成したのだとか。

ただ、いくら中国でシェアが上がってもファーウェイは中国以外の国、例えば日本で最新のスマホが売れているかというと、現在は売れていないというのが実際のところです。それはなぜかというと、アメリカと中国との冷戦さながらの経済制裁合戦の中、米国はファーウェイのスマホを米国市場から締め出しました。ファーウェイのスマホの基本ソフトはandroidなのですが、androidスマホのユーザーが利用するアプリは米国企業のGoogleが管理するGoogle Playが使えないと利用できません。例えば、同じandroidベースのAmazonが販売しているFireタブレットではGoogle Playが使えないため、利用できるアプリが制限されるため安く売られている(Amazon独自のアプリストアで提供しているアプリのみ利用可能)というところがあります。

翻って中国の場合、Googleのサービスそのものを中国当局が中国国内で利用できなくしていて、その状況に合わせて中国のネットサービスが発達しているところがあるので(いわゆる中国系のGoogleやTwitter代用サービスなど)、中国で売られているスマホについては、今後いくら米国との制裁合戦になっても問題はありません。しかし、そのスマホを海外で売ろうとした場合、中国以外では当り前に使われているサービスが使えなくなってしまうのです。そのため、私が今使っているP30 liteはまだ問題が起こる前に発売されたものなのでGoogle Playは普通に使え、androidのバージョンアップが行なわれますが、最新のP40シリーズではファーウェイ独自のアプリストアからアプリをダウンロードして利用することになるわけで、よほどの物好きなら買って使うかも知れませんが、ほとんどの人は買うと後悔するスマホになると言わざるを得ません。

まあ今後は、中国はアメリカ以外の第三極の国々を取り込んで、中華方式のスマホを売ろうと目論んでいるのかも知れませんが、そうした国々においてもやはりGoogleの提供するアプリは必要であるわけで、実質的には今後の中華スマホは中国国内専用としての意味しか持たなくなる可能性が出てきます。どこまで米国と対決したまま突っぱねられるのか? ということが個人的な興味になりますが、話はスマホだけにとどまりません。

様々な規格の世界標準になれるかが今後の世界を相手にした貿易で自国の製品を売って外貨を稼ぐためのキーワードになります。将来的には例えば電気自動車の充電の規格についても、いわゆる中国式に固執することによって日本のメーカーはアメリカを含めて世界に自国メーカーの電気自動車を売ることが難しくなっていくだろうことが一つの可能性として予測できます。以前報じられたニュースでは、日本のメーカーは電気自動車の充電規格「チャオジ」を中国と共同開発してゆくゆくは世界標準規格となることを目指しているということですが、政治的な状況によってはいくら優秀な技術を作ったとしても、かつての家庭用ビデオ規格のVHSとβのように、技術が優れていてもイニシアチブを取れないようなことも起こりかねません。

中国自体は自国ないし多大な投資をしている諸国で自国生産の電気自動車を使い、ファーウェイのスマホのように世界的なシェアを稼ぐことも可能なのでしょうが、同じことを日本がやろうとしても内需には限りがあり、やはり貿易で儲けられなければ日本メーカー自体の体力も下がってしまいます。

今回の想定は、あくまで個人の想像の範疇を出ず、逆に中華規格がスマホも電気自動車も世界を席巻する可能性もないことはありませんが、そうなると日本の対米国との関係自体がおかしくなるでしょう。言えることは、今後の中国と米国との関係如何によっては日本の経済にも大きな影響が出てくるということです。良い技術が政治的な状況で捻じ曲げられることには憤りを感じざるを得ませんが、こんな時だからこそ、日本のトップの方々にはしたたかな交渉と的確な判断をお願いしたいですね。


カテゴリー: 通信サービス全般ニュース | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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