eスポーツはもはや今の時代に求められているコンテンツだ

東京オリンピックマラソン代表を決める男女のレース(東京マラソンと名古屋ウィメンズマラソン)はかろうじて開催されたものの、一部の人の間では「春はセンバツから」と言われた選抜高等学校野球大会が中止に追い込まれ、大相撲の巡業は無観客で行なわれたものの東京オリンピックが2020年中にはできないことがわかり、サッカーJリーグやプロ野球が開催できない状況になっている中で、家に引きこもっている中でも、競技スポーツをテレビで見られないということに大いなるストレスを感じている方も少なくないのではと思います。

しかし、新型コロナウイルスの脅威が去り、日常生活が元通りになる日というのは今もってはっきりしないわけですから、このまま内に籠もる生活の中でストレスが溜まっていく流れになっていくのはある意味仕方ないものであるかも知れないのですが、外に出て見に行くスポーツではなく、観客だけでなくプレーヤーも自宅でネットに接続した状態で対戦し、その様子を多くの人々の間で共有して盛り上がれるのが、いわゆる「eスポーツ」であるということに改めて気付きました。恐らくこのままではあらゆるスポーツの大会は中止となることは目に見えていますので、地上波であれば最高ですが、ネットTVをはじめBSやCSあたりでも、リーグ戦が行なわれているeスポーツを生中継してくれれば、それはそれで盛り上がるのではないでしょうか。

かくいう私自身も、画面ではキャラクターが動くだけなので、eスポーツをプレーしているプレーヤーに思い入れをすることはなかなか難しかったのですが、先日たまたまeスポーツの中の「eBASEBAL(パワプロ)」のプロリーグで活躍する高校生選手に取材した地上波テレビでの特集を見て、それまでの認識を改めることとなりました。その選手は中日ドラゴンズ(eBASEBALLでは実際の球団にプロのプレーヤーを配置して年間王者を決めるリーグ戦を行なっています)の新井宇輝選手で、出身は大阪府ですがなぜ中日ドラゴンズなのかというと、彼はeスポーツを始める前には日本代表を本気で狙うほどのアスリートとして教育を受け、スポーツ留学で愛工大名電付属中に行ったエリート卓球選手だったということが関係しているのではないかと思います。

この新井宇輝選手の何が凄いかと言いますと、お爺さんが周樹森という有名な指導者で、元は中国の北京女子チームを指導していた時には、リオデジャネイロオリンピック女子シングルスで優勝した丁寧選手をチームにスカウトし、彼女を代表のエースに育てました。その後、周樹森氏は定年で中国を離れ、2009年シンガポール女子チームの監督に就任してすぐ、翌年の世界選手権では何と母国である中国を破り、当時でも19年振りに中国チームの金メダルを阻んだというまさに伝説とも言える人物です。

息子で新井宇輝選手の父である新井周氏は日本に早くから留学し(愛知・桜丘高校)、日本国籍を取得して日本代表としてアテネオリンピックに出場しました。当然その息子である宇輝選手も幼い頃から卓球の手ほどきを受け、お爺さんの関係もあったのか、中国スーパーリーグの丁寧選手にも手ほどきを受けたのだそうです。血筋から言えば現在の日本トップである張本智和選手よりもすごいと思えるのですが、残念ながら肘の怪我がひどくなり、中学校で彼の卓球選手としての経歴は終わってしまいました。

面白いのはそこからで、それまでの卓球で日本代表になるという目標を失なってしまった喪失感がすごかった息子を見かねた父の新井周氏が、自分が好きだったからという理由で宇輝選手を「パワプロ」に誘い、親子でプレイしているうちにどんどん腕前が上達し、数年でプロでのドラフト指名を受け(eスポーツの野球でもそんなことをするんですね)、晴れてプロのeスポーツ選手になったのだとか。

小学生からかなり早いピッチで卓球の球を打ち合っていたということが、パワプロのプレイにも生きていることは間違いなく、家に引きこもって運動も何もしない人がeスポーツでプロになっているのではないかという偏見も無くなりました。このように、実際にプレイしている人となりがわかってくると、やはり見るにも贔屓のチームや選手が出てきて楽しめるようになるだろうと思います。

恐らく今後はテレビ番組を作る場合でもドラマやバラエティのロケは難しくなるでしょうし、スタジオ収録でも人が集まらないようにするのが大変だと思います。そんな中で、プレイヤーと実況・解説者、そして観客までもが別々の場所にいても中継として成立し得るeスポーツがテレビにおけるコンテンツとして成長していくのではないかと期待を持っています。


カテゴリー: ノンジャンルコラム | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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