北海道胆振東部地震に関してのSNSによるデマを検証すると

北海道胆振東部地震に関するSNSでの発言を分析された方がいて、その内容が毎日新聞に載っていました。熊本地震の時に「ライオンが動物園から逃げ出した」というような外に出て避難生活を送っている人に対するいやがらせのようなデマのTweetは、その後大きなニュースになり当局もしっかり発信元の人間を特定して罰する方向にあることをアナウンスしたこともあり、同様の人騒がせで恐怖を与えるようなデマはここまで見付かっていないということですが、それでも「拡散希望」という文句を付けて不確かな情報をツイートするような事例はあったようです。

私も気になってツイッターをチェックしていましたが、その中で気になったのは恐らく地元のリーダー的存在であるような人物が情報まで自分から発信しようと功を焦って水道に関する情報を発信したところ、発言の全てが間違いとは言えないものの、役所に問い合わせをしたら思いきリ否定されてしまった立憲民主党の地元議員のツイート問題がありました。

今回はたまたま立憲民主党だったということで政治的な思惑もあってかその発言についてかなり「間違った情報を立憲民主党が出した」という事が改めて一人歩きして、発言した議員の方は地元住民の方だけでなく党の関係者の方にも多大な迷惑を掛けてしまいました。ここでは別にどの政党だからということは言うつもりはありませんが、きちんとした情報網も持たない人が義憤からだとしても、読んでみていい加減な情報を出されると多くの人が迷惑をするということを学んでいただき、情報発信は専門家に任せるか、出すなら徹底的に情報の裏を取れるような体制がなければ発信を控えるべきだと思います。これは、一般のユーザーでも同じで、毎日新聞では今回の地震で広く拡散された流言に近いツイートについて紹介しているのでここでも紹介します。

(引用ここから)

<拡散希望 NTTの方からの情報です。只今道内全域で停電しているため電波塔にも電気がいかない状況なので携帯電話もあと4時間程度したら使えなくなる可能性がでてきたそうです。 なるべく1人で行動せず家族や仲間、友人などと共に複数で安全な場所に避難して下さい>

(引用ここまで)

このツイートについては「正しい情報」と「あやふやな情報」が混じっています。また、それらしい「災害時の注意呼び掛け」もあります。毎日新聞ではこのツイートをそこまで強く非難していないような感じですが、一目で嘘とわかるデマよりもこのツイートは罪が深いのではないかと思っています。では具体的に引用した内容について分けて考えてみたいと思います。

・正しい情報

停電により携帯電話の基地局に電気が来ないと、4時間かどうかはわからないものの時間の経過とともに基地局を動かせる予備電源が切れれば、その基地局を利用した通話・通信ができなくなる。

・災害時の注意呼び掛け

なるべく一人で行動せず、複数での避難を呼び掛け

・あやふやな情報

その1 「NTT」とツイートにあるがどこの営業所、ならびに担当者からの情報なのか?
その2 その事が具体的に書かれた公式のツイートおよび公式ウェブページへのリンクはあるのか?
その3 北海道全域で停電していると言っても地域によっては基地局に電力を供給しているところもあるかも知れない。ツイートで示されている「電波塔」とは具体的にどこのことか?
その4 具体的な場所が一切出て来ない中で、なぜ4時間という携帯電話が使えなくなる可能性があるという時間だけが具体的に書かれているのか?

このように、引用した書き込みは「正しい情報」と「災害時の注意呼び掛け」を前後に散りばめることで信用させ、曖昧な部分を読んでいる人に感じさせないようにし、不安だけを拡散させることを狙った極めて悪質なツイートだと言えるでしょう。今後、同じような災害が起きた場合も、こうした事例に基づいて巧みに多くの不安にかられる人間の心をコントロールしようとする輩は出現すると思いますので、その場合はツイートの発言元に質問をしてみるのも効果的です。

「NTTのどこに聞いた情報ですか?」
「電波塔とはどこの電波塔ですか?」
「基地局には規模の大小のものがあると思うのですが、なぜ全てのタイムリミットが4時間なのですか?」

こうした質問には当然答えられないと思います。それは読む人を納得させるだけの情報ソースを発信者が持っていないからです。ですから、逆に自分がツイートで拡散を希望するような内容の書き込みをする場合、単なる伝聞ではなく実際に助けを必要とする人に対峙し、窮状を語ってもらった様子を写真や動画にしてツイートに添付するくらいしないと大多数の人の納得は得られないかも知れません。

また、今回の地震ではツイッターだけでなく個人やグループでのやり取り用のツールとして使われているLINEを使ってのデマも相当回ったということです。これも毎日新聞の記事からになりますが、

(ここから引用)

「午前8時付近に大きな揺れが予想されているようです(自衛隊情報)」

(引用ここまで)

これだけ見ると、「自衛隊情報」というお墨付きのような文字が最後に書き加わえられているものの、内容は世界でまだだれも予言したことのない「地震の直接的な予言」です。内容が荒唐無稽なものであっても、まだ私たちがインターネットという通信手段がない頃に流行った「不幸の手紙」「チェーンレター」のようにLINE利用者の間で拡散されていったことはここで紹介しておきたいと思います。

もし、若年層の間で大人が知らないうちにこんな荒唐無稽なデマが回ってきたら、しっかりと「こうした情報は間違いである」ということを大人が伝えてあげる必要があります。最後に、典型的なデマの主なものと、その情報がなぜデマと判定できるか、その根拠について書いておきます。なお、事例については毎日新聞の記事中にある関谷直也著「『災害』の社会心理」(KKベストセラーズ)にある事例をそのまま使わさせていただきます。

(1)被害流言 「被災地に窃盗団が向かっている」などの偽情報。

地元警察や市町村からの発表でないと信憑性に乏しく、さらに遠征してくる窃盗団がいるだけでは被害を受けていない状態なので現場を押さえなければ摘発のしようがありません。そもそも窃盗団は具体的に被災地の中のどこに向かったのか? という情報がなければ警戒のしようもありません。どちらにしても被災者全員の不安を煽るデマだと見なした方が無難でしょう。

(2)災害再来流言 次に災害が来る時刻や場所を予告する

最初の地震が前震なのか、それとも本震なのかは余震の様子を観察して実際に来てみないとわからないというのが熊本地震の様子を見て私が思ったことです。今の科学ではそんな都合のいい時に細かい時間や場所まで予知することがいつから可能になったのか、きちんとした予知をして必ず地震を言い当てる方がいたら紹介して欲しいです。「予言を具体的な日時・場所を示して行なっている書き込みはデマ」という原則は変わらないのではないでしょうか。

(3)後予知流言 「地震雲」などの気象現象や動物の異常行動から余震の危険を煽る

これも(2)に重なりますが、地震雲や動物の異常行動から地震を予知するのに、具体的な日時・場所と連動していたとしたら、これは本当になぜその日時・時間・場所を細かく指摘できるのか、その根拠を教えて欲しいくらいです。地震が起こった後になって事前にこんな雲が出ていた、動物が異常な行動を取ったと言うことは簡単です。そうではなく、事前の観察によって完全なる地震予知ができる時が来ればいいのですが、そこまで認められていないということも確かなのです。

(4)災害予知流言 災害前や大きな地震の起きた別の場所で地震が起こるなどと予言する

こちらについても具体的な日時・場所が示された内容の場合、デマと認識せざるを得ません。ただ、唯一南海トラフ巨大地震については、「南海トラフ地震に関連する情報」を気象庁が発表する場合があります。その場合は南海トラフ全域を対象に地震発生の可能性の高まりについてお知らせすることはありますが、その際は気象庁の公式ツイートかウェブページから情報の確認をすればいいだけです。とにかく「予知」についての具体的な情報を「拡散希望」と付けて出すものを見付けた場合は、むやみに拡散しないことがまずは大事だろうと思います。


カテゴリー: 防災関連ニュース | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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