私は最近になって、格安SIMのデータ通信の契約内容を見直し、重複する形で入っていたOCN モバイル ONEの契約を解約し、最安でauのLTE回線が持てるイオンモバイルの1GBプランをその代わりに契約しました。それまで格安SIMの会社と複数契約していたものの、すべての業者がNTTdocomoから回線を借りているため、もしドコモのネットワークがダウンした場合のバックアップとして契約したのですが、昨今のNTTdocomoをはじめとするNTTグループの動きを見ていると、別の意味でauやsoftbankから回線を借りている業者との併用をする方がいいのではないかと思うようになりました。
というのも、一部新聞やネットで報道されていることなのでご存じの方もいると思いますが、漫画などの海賊版を自由にダウンロードできる違法サイトについて、経営を脅かすものだとした出版社の意向を汲む形で、政府が漫画などの海賊版が大量掲載された特に悪質という3つのサイトへアクセスを遮断することを促す緊急対策を決定したのですが、これはまだ法制化以前の段階で、国会の議論を経て法制化になってから遮断されるという手順が踏まれいくものだと個人的には考えていました。具体的なサイトを閉鎖に追い込むには、広告を出しているところを押さえれば、収入の期待できないサイトで今まで通りダウンロードさせるにもコストがかかるので、あくまで大きなニュースにすることで、サイト管理者や怪しいサイトだとわかっていながら広告を出す業者への警告の意味あいでまずは宣言したのだと思っていたのです。
しかし、この話を受けた国内最大の通信業者であるNTTグループのプロバイダー(ドコモ・OCN・ぷららなど)が4月23日に政府の指摘した3サイトへのアクセス遮断実施を決定してしまったのです。いわゆる政府の意向を「忖度」して速やかに実行に移したということなのですが、ネットユーザーにとっては、きちんとした検討がされないまま「不適切だ」と認識したサイトを遮断するなんて前例ができてしまうと海賊版以外にも「不適切」なサイトだと認定されたたものについては同じようにネットで見られなくなる可能性があります。
さらに、技術的な問題としてサイトにアクセスしようとするユーザーをブロックするには、ネットを利用しているすべてのユーザーから情報を取得する必要があると言われています。当然そうした情報はプロバイダーによって管理され、外に向かって出ないというのが前提ですが、もしそうしたセキュリティが破られたり、プロバイダーの内部に個人的に入り込み、特定の人物のネットアクセスを記録したデータが横流しされるような形で公になってしまったら大変なことになります。
個人の特殊な趣味思考が暴かれることもあるでしょうし、病歴が他人に知られたりする可能性もあります。また、有名人や芸能人については、過去にデータにアクセスできる権限がある人が興味本位でデータを盗み見たということが問題になったこともありました。個人的には本気になって自分のネットアクセスが調べられたら、ある程度は諦めなければならないんだろうなとは思っていますが、多くの人が意見を出し合い、漏洩や悪用がされないような方策が取られるべきだと思います。
さらに、今回のようにまだ法整備もされていないうちからNTTグループが利用者のすべてのデータを取って、今までの報道を受けるような形でこの文章を書いている現在閉鎖されている3サイトへのアクセスを遮断することに何の意味があるのかということも言えるでしょう。もし政府への忖度だけでユーザーの不利益になるようなネットユーザーに対してのデータ収集を行うのなら、まだ具体的にはアクセス遮断に対しての態度を表明していないプロバイダを併用しながら、ネットの調べ物や買い物を行うようにしたほうがいいという時代になってしまうのかもしれません。
個人的には、今後の状況の中でどうしても法整備をしなければ海賊版はなくならないということがわかり、法整備を考える中で多くの有識者の意見を聞き、さらにネット利用者のプライバシーデータの流出が起こらないような対策がされて法が執行された時点でプロバイダがアクセス遮断を行うならある程度は安心できると思っています。しかし今回のようにまだ議論もされていない中でユーザーのデータを取ることを決めたのがモバイル通信最大手のNTTグループだったというのは大きなショックでした。
今後の状況によって、もし携帯キャリアが全てNTTに追随するような方向になるなら、スマホやモバイル通信で自分のプライベートに関わることを調べたり商品を買わない方がいいケースも出てくるということを考えざるを得ません。もっとも今これだけドコモを始めとするNTTグループの動きが批判される流れもある中、そう簡単に追随することはないと信じたいです。そういう意味でも、今後のニュースについてはよく吟味し、複数の端末に複数のSIMカードを利用して使っている場合には、モバイル通信のキャリアは1つに集中させることが必ずしもいいことではないということも感じてしまいました。