前回紹介したように高速道路に限って自動運転を利用できる車や、携帯電話の通信方法としての次世代通信の5Gの実用化など、東京オリンピックが開催される2020年を目指して開発が行なわれているものは多いですが、それとは反対に、2020年の7月に料金プランの提供を終了することを発表したのが現在Y!mobileとウィルコム沖縄でサービスが続いているPHSです。
今となっては携帯電話サービスにエリアや加入人数で差を開けられて尻すぼみのような形で終わっていくようにも感じられるかと思いますが、今の大手3キャリアが全くもって横並びのサービスで推移していることを考えると、改めて大手以外の競争相手がいないと、今後の通信サービスはどうなってしまうのかと思ってしまいます。
もともと大手キャリアはスマートフォンの導入よりもいわゆる高性能のガラパゴス携帯を高額で売り(それもiPhoneの登場ともにガラケー時代は終焉を迎え、日本メーカーはスマホ分野で遅れを取ったのはご存知の通り)、iモードのような携帯電話専用のインターネット接続でお金を取り、さらに携帯サイト利用料などという今となっては考えられないような形でお金を毎月徴収することがビジネスモデルとして行なわれていました。通話についても無料通話の付いた料金プランが普通で、データ通信料についても使っただけ青天井に増えて社会問題となったりしているとことに登場したのがウィルコムの「Eメール使い放題」や「データ定額」であり「だれとでも定額」につながる音声通話の10分以内通話の定額制を始めたのもウィルコムが初めてでした。
データ定額は最大32kbpsと今から考えるとかなり遅いわけですが、この定額がすごかったのは端末本体での利用だけでなく今でいうテザリングとして端末をモデムのようにパソコンに繋げて使ったり、本体が単三4本の電源で動くモバイルルーターのような製品までありました。携帯電話会社では今でも本体以外の別の端末でインターネット利用をする場合のテザリング料金を設定しており、実際にその料金を徴収しているところもありますが、PHSの世界ではデータ通信カードとしても販売していたこともあり、テザリングに使えることが普通だったわけです。
それならなぜPHSに勢いがなくなってサービス終了にまで追い込まれたかということになりますが、それは独自のビジネスモデルで相当儲かっていた携帯電話各社が、ウィルコムに顧客を奪われることを恐れ、データの定額プランや、音声通話の5分定額・10分定額、24時間通話放題というような、ウィルコムのサービスを真似たプランを導入することで、そのサービス網と広いエリアを求めるユーザーをつなぎとめる方策を取ってきたからです。
あと、ウィルコム没落を決定づけたのが、日本通信を最初にしてウィルコムと同じくらいのテザリング自由のデータ定額プランを月千円を切る安い価格で行なったMVNOの台頭があったと言うことができます。日本通信は当初はウィルコムから回線を借りての商品も出していましたが、やはりエリアについてはどうしても対抗できなかったのが仇となりました。
私が今使っている携帯電話のプランは音声通話定額のものが中心ですが、特に24時間通話無制限のプランは、使い方によっては携帯電話会社の利益にならない可能性があると言われています。ただ、こんなプランが今も使えるのはウィルコムがそれほど高くない価格で通話無制限プランを出し、特にビジネスユーザーの流出を避けたかったからだと思われます。今後は音声通話でもデータ通信を使ったIP電話の利用が伸びてくることが考えられるので、今の状況も変わってくることが予想できますが、ウィルコムとしてはまさか通話定額まで真似されるとは思わなかったのではないでしょうか。
今後、新たに楽天が新しい通信事業者として加わる中で、今までのような護送船団に楽天が加わるのかどうかも注目ですが、逆に楽天としても自分達がウィルコムのようにならないためにどうしたらいいかということも十分考えながら事業について考えを巡らせていることは確かでしょう。しかしその結果、通信料金が高値のまま据え置かれ、端末購入のために3年から4年縛りが当り前になる状況を良しとするような事になってしまっては、将来も普通の家庭の中で通信費の捻出額が多くなるあまり、他の物が買われないという一部の状況が変わってくることはそれほど考えられません。
楽天の参入に関しては、ドコモや他社のように通信品質を常に人の目でカバーするための体制が取れるのか、基地局を設置する場所を電柱にした場合(楽天は電力会社に協力を仰ぎその設備を使った基地局を増やしていく方針)、大きな災害が起こった場合にはどうするのか、そもそも用意できないインフラについては大手から回線を借りるという方針で大丈夫かというようなネガティブな意見もあります。そのため、無難に立ち上げるためにはあまり他のキャリアを刺激するような挑発的なプランを出してこないかも知れませんが、ウィルコムが現在のモバイル通信で当り前に使われているものを出してきたから今があるということも確かです。楽天には大変な部分もありますが、何らかの爪痕を残しつつサービスを維持していく道を探りながらサービスを展開していって欲しいとPHS終了のニュースを聞きながら思いました。