公共広場のベンチはどうあるべきか

私はそこまでしたことはありませんでしたが、一昔前のバックパッカーの中には公園やバスの待合所、無人駅のベンチを活用して寝床を作り、一夜の宿とするような旅行のスタイルがありました。今でももしかしたら四国のお遍路旅では橋の下に寝床を作って毎日歩きながら八十八箇所を回る人もいるのかも知れませんが、四国については歩き遍路のための善根宿があるものの、他の地域ではなかなか公園で寝袋に入って野宿というのはしにくい時代になっていると思われます。

それは、地域に住んでいる人にとっては、突然現われて夜中に何をしているかわからない人というのは恐怖の対象となりえますので、日が落ちてからウロウロしているだけでも通報されるような事はあるかも知れません。それと同時に変わってきたのは公共の施設自体が変わってきたことです。

いわゆる公園のベンチというのは、昔ならそのままベンチに寝そべっている人の姿があるだいたい人の背ぐらいの長さを一人で専有できる感じの作りになっていました。それがバックパッカーや飲み過ぎた酔っぱらい対策ではなく、いわゆるホームレス対策として「寝られない設計のベンチ」に取り替えられたのは多くの方がご存知でしょう。

この方法には賛否両論あることと思いますが、危惧されるのはもしホームレス対策のないベンチを設置した場合、そのベンチが公園利用者が使えないような状態になってしまいやしないかという事でしょう。公園の利用者というのは、例えばラジオ体操をやるために集まってきたり、早朝のウォーキングというところまで考えるとかなり朝早くから夜に至るまで、多くの市民が利用することが考えられます。だからこそバックパッカーの駅寝や公園での仮眠については地域の人が活動をし始めたらすぐに撤去するという暗黙のルールを持って行なっている人の場合は大きなトラブルにはなりにくいのですが、そうした暗黙のルールを知らずに地域住民の生活に立ち入ってしまう人が多く出てくるにあたって、強制的に宿代わりにベンチを使っている人という風に一くくりにして排除する事を考えた時にあのようなベンチが一般化したということが言えるわけです。

そんな中、とある場所で見付けたのが写真のようなベンチで、まずこのまま人間一人なら十分寝床として使えるようになっているというのにびっくりしました。ただ、このベンチは駐車場のすぐ脇に設置されていたので、別の意味で長い時間占拠するには相当神経が図太くないと難しいのではと思いました。ただ、あえて昔のような仕切りのないベンチにするのは理由があるのではないかと思って近ずいてみたら、その理由がわかりました。

ごらんの通り、ベンチの「足」として座る部分を支えている2つのやけに大きなものは、災害が発生して水道が使えなくなった場合に備えられた「防災トイレ」としての役割を持っていたのです。ベンチを写真のように単純に作ることにより、いざという時にはこのまま天板を外せばすぐに使えるようになるのか、それともこのトイレ部分を用意された下水道に直結するマンホールにつなげるのかはわかりませんが、この駐車場には同じものがもう一つあったので、この場所で外からトイレを運び込んで来なくても4つのトイレをこの施設自体で使うことができるということになるでしょう。

私の推測が正しければ、この形のいつでも防災トイレに変化するベンチは、あくまで人の出入りのある駐車場から公園に向かう通路に設置されたことでホームレスやバックパッカーの流用を防ぐという形で設置されたということが言えるかも知れません。

ちょっと興味が出てきたので調べてみたところ、このベンチについては「防災トイレベンチ」という単語で検索すると同じものが出てきます。またこの防災トイレを出している同じ会社では「防災かまどベンチ」というものもありますが、こちらの方はベンチを3つに分け、このベンチでは寝られないようになっています。

こうした流れを見ると、今後は防災トイレベンチもそのベンチには寝られないような形のものが出てくることも考えられます。ただ一つだけ言わせてもらえれば、通常時には一人によって占領されない形で仕切りのあるベンチを置かれるのはいいと思うのですが、いざという時には足の部分はトイレとして使え、さらに天板部分については担架として使えたり、簡易コットとして使えるように仕切りを取り外せるようにするのも実際の災害時には役立つこともあります。今後はそんな観点からどこかへ出掛けた時には単なるベンチではなく何かあった場合に変形する可能性のある変わったベンチがあったらそのベンチに注目してみたいと思います。

カテゴリー: 防災コラム | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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