ネットニュースで通販大手のアマゾンがWi-Fi内蔵の電子レンジをアメリカで売り出すことを発表しました。日本ではまだ売り出しはされないようですが、ニュースを見てまずびっくりしたのがその電子レンジの価格でした。
「AmazonBasics Microwave」というその電子れんじは、59.99ドル:約6800円で売り出されると言いますから、機能的にはベーシックなもので、単にWi-Fiが付いただけではないかと思われそうですが、この電子レンジはアマゾンが出しているAIスピーカー「ECHO」とWi-Fiを経由して繋がることができ、声でその動作をコントロールできるという大きな特徴を持っています。
日本の高価なレンジは本体に様々なレシピが入っていてタッチパネルを操作すれば複雑な料理も簡単に作ることができるのが売りのものがありますが、今後は日本製の高い製品を買わなくても「AmazonBasics Microwave」と「ECHO」、そしてネット環境さえあれば声だけで電子レンジがコントロールできるというわけです。
さらに、AIスピーカー用のスマホのアプリでお料理別にきめ細かい動作を命令して制御できるとしたら、高価なレンジ並みに多くの料理に対応し、さまざまな使い方ができるレンジとして化ける可能性が出てきます。
実際のレンジとしての性能について、どんなものになるのかわからない中で書いているので何とも言えませんが、今後AIスピーカーとのセットで複雑な料理についても命令するだけで良くなり、さらにスピーカーもレンジも安く提供するということは、それを使って調理をする人のデータが全てアマゾンのビックデータとして蓄えられてしまうという側面もあります。そうしたことを気にしないで声での命令だけで電子レンジの細かい設定は任せられる便利さを追求するなら買って使うのもいいでしょう。
ただこの方式がアメリカや日本でも一般化するようなことになると、細かな設定をするためのレンジの中で高価なモデルはほぼ駆逐され、今回のアマゾンの電子レンジのようなレンジしか選べなくなるような未来も考えられないことはありません。将来は年配の人でも普通にスマホやタブレットを使ってAIスピーカーや電子レンジと連携を取れるようになれば、今後の家電の状況も変わってくることが予想されます。
日本のもの作りを担うメーカーにとっては、こうした流れというのは逆に全てクラウドに蓄積されたデータ上から司令を出して全て解決されてしまうようだと、レンジそのものについての高機能化のうちで、考え直さなくてはいけなくなる可能性も出てきます。アマゾンの強さというのは今さら言うまでもありませんが、日本のメーカーが他のAIスピーカーと連携でき、さらにネット上の膨大なデータを無料で使えるような製品を出してくればアマゾンの機先を制することができるかも知れませんが、問題なのはやはり価格でしょう。
アマゾンは一つの事業で赤字であっても最終的に「総取り」することを狙っているようなところがあります。ユーザーの側としても、一つの企画に全てを握られるようなことになると、メーカー同士の競争による安くても高品質な物やサービスが得られにくくなりますので、新しい技術には冷静に興奮し、一気にライフスタイルまで変えないようにするのがいいのかなと個人的には思います。とは言え、今回のアマゾンの試みにはなかなか面白そうなところもありますので、「道具として・単体レンジとしての使いやすさ」はどうなのかというところを確認してみたいなと思っています。