日本電産会長の永守重信氏が、同社の2022年株主総会で発言した電気自動車に関する話が話題になっています。
氏は電気自動車について、車両価格は200~300万円でも高いと言い、中国で約50万円の車両価格で販売されヒットした格安EV「宏光MINI EV」の例を挙げ、「日常的な車使いにおいて、9割以上のユーザーの平均運転距離が30km未満である」というデータを示し、航続距離が短くても価格の安いEVを欲しがるユーザーが出てくるという見通しを語り、航続距離は100km(一日)程度走ることができれば十分だという発言をしたということです。
当然、この発言をニュースで見て、激しい反発をする人々がいるわけですが、今回発言した永守氏がどこまで社会的なインフラについて考えているかどうかはわからないのですが、これから紹介される電気自動車および電動バイクを充電するための設備をどう作っていくかによっても変わってくるのではないかと思います。
まず、航続距離が少ない動力をサポートする車載用電池についてですが、もし一回満充電して100kmくらいの少電量のものでしたら、車とバイクの両方に共用で使えるものを作ることが可能なのではないかと思われます。できれば、ユーザーでも簡単に取り外せるようにして、自宅のコンセントから充電できるようになると、電池劣化の問題はありますが、市内への買い物に限定するような使い方であれば、自宅のコンセントから充電して劣化したらバッテリーを取り替えるというような使い方ができるようになります。
問題は、隣町への距離が片道でも100キロを超えるような地方に住んでいるような場合にどうするかですが、もしバイクと自動車の電池を共用化し、さらに簡単にユーザーが取り外して充電できるようになれば、特別な設備がなくても一台に一つの家庭用コンセントを設置した充電ステーションをきめ細やかに配置すれば、それこそ「出川哲朗の充電させてもらえませんか」のように充電をしながらのんびりとした移動をすることは一応可能になります。
ただ、それでは一刻を競うような急な利用には対応できないので、できればそうした充電ステーションには別料金ですでに満充電になっている電池との電池交換ができる、現在台湾で使われている電動バイクの充電ステーションのような施設をきめ細やかに作ることができれば、レーシングカーがピットに入るようにさっと交換しておよそ100kmごとに新しい電池に載せ替えて走り続けることが可能でしょう。
個人的には、いわゆる軽自動車タイプの航続距離100kmの電気自動車で日本一周ができるくらいの社会的なインフラ整備が進むならば、新車価格50万円で、電池を自由に交換できるサブスクサービスの価格がいくらになるかはわかりませんが、日常的に自宅で充電できるくらいしか走らないならお金を掛けず、旅行時にはサブスクサービスに加入してその時だけ集中的に使うというシステムができれば利用したいです。
言うならばモバイルネット回線のトッピングのように自在に切換可能な仕組みです。利用するためには、スマホでいつでもどこでもアクセスできるような環境が必要になると思いますが、こうしたシステムを作っておくと、もしいきなり電池切れになりすぐには充電ステーションにたどり着けないようなトラブルになったとしても、現在のJAFのガソリン給油サービスのように年に数回は無料で満充電された電池と交換してくれるサービスを行なってくれれば良いと思います。本当にどうしようもなければ、どこかのお店にコンセントを貸してもらい、充電するという事もできます。様々な方法で充電が可能なものを普及させることで、電気自動車に変えるメリットも増えていきます。
個人的にはさらに、もし自動車とバイク共用のバッテリーが実用化されたら、今の電動工具マキタのリチウムイオンバッテリーのように、自動車のバッテリーをポータブル電源のように使えるアダプターが出れば、旅行に出る際には予備の電池を2~3個購入しておき、一つは走行用、もう一つは車内利用のために使うというパターンも考えられます。この場合もサブスクで電池交換が全国どこでも可能になるなら、車内利用の電源を車内充電することなく、容量が減ったと思ったらすぐに満充電の電池を使えるので、車内で火を使うことなく調理や扇風機の使用などもできるようになるのではないでしょうか。
ただ、こうした社会的インフラを整えるためには、技術ではなく政治の力が必要なのですね。こんな時代だからこそ、ぜひ今後の自動車ユーザーが少ないコストで電気自動車に乗り換えられるだけでなく、今までと使い勝手に差が出ないような社会的なインフラ整備とセットでこうした構想が実現されることを希望します。