テレビがインターネットに押されて地方局の経営が厳しいという話を聞きますが、それよりももっと大変なのは地方にあるAM(中波)による放送を行なっているラジオ局の経営の問題でしょう。それは単に広告収入だけの問題ではなく、老朽化したAMの送信設備の更新をどうするのかという放送の根元に関わる問題も抱えているのです。
AM波は一つの送信局のカバーエリアが広いのが特徴で、夜になると電波が良く飛び、状況によっては地方ローカル局の放送を遠方でも聞くことができます。そうした特性から過去には性能のいいラジオを売って全国のラジオ局のベリカードを集めるBCLという趣味がありました。
ただ、今は高性能なラジオを使わなくても全国の民放ラジオや主要都市のNHKをインターネット経由で聞くことができるようになっています。動画と違ってラジオは一般的なMVNOの低速と言われる200kbpsくらいのスピードでも途切れずに聞くことができるので、先日紹介したmineoの最低プランだけでもデータ消費の心配をせずにずっと流しっぱなしにしても大丈夫なくらいです。
ただ、これもスマホを持っていれば便利に使えるものの、多くのユーザーは普通のラジオでローカル局の放送を聞いており、もし現在のAM局が今のままAM放送を続けられるだけの設備投資ができず、FMのみの放送に変わってしまったとしたら、少なくない数のラジオでは今までの地方ローカルAM局が聞こえなくなることが考えられます。それは、FMの周波数が90MHz以上のところにAM局が電波を出しているためです。改めてご自宅にラジオをお持ちの方はFMの周波数をどこまで受信できるのか確かめてみて下さい。今後新しくラジオを購入する場合「FMワイドバンド対応」のラジオを購入されることをおすすめします。
しかし、AMにはAMのいいところもあります。サービスエリアが狭かったり、山間部をエリアにしないのなら費用を掛けずに最低限の送信設備を管理すればいいですが、少なくとも携帯電話と同じくらいの人口カバー率を確保するためには、多くの中継局が必要になります。こうした設備投資の額には地域差があり、北海道と沖縄では相当変わってくることはおわかりでしょう。高出力のAM送信設備を維持して広いエリアをカバーするか、小さなFM用の基地局を細かに配備してAM局から撤退するのか、地方局では様々なレベルで選択を迫られるようになるでしょう。
さて、ここからはラジオリスナーとしての立場で書きますが、今までは車の中ではカーラジオを聞いてきましたが、地域によってAM放送が無くなるようなところもあることを考えると、安定して車内でラジオを聞くためには、カーラジオではなくスマホから「radiko」や「らじる☆らじる」を利用するということです。radikoにはGPSなどを使った現在位置を利用した判定機能があり、実際のラジオの電波が届いていなくても、携帯電話の電波が届いていればその地方のラジオ局をインターネット経由で聞くことができます。さらに走る車では安定してスマホのバッテリーを充電できるので、直接スマホをカーオーディオにつないでもいいですし、カーオーディオがなかったり古い車でスマホとつながらないような場合には、Bluetoothスピーカーを使ってもいいでしょう。ただ、車を使って長距離移動をする場合に気を付けたいことがあります。
NHKはともかく、民放の場合は先に書いたように、地域判定機能によってそのエリアを出てしまうと今まで聞いていた放送局が聞こえなくなってしまうということが起こります。ラジオ放送を聞く場合にはそこまでシビアに考えなくても良かったのですが、ドライブ中に安定してradikoを聞き続けるためには、現在地に左右されないで全国の放送局をリアルタイムに聞ける「ラジコプレミアム」のエリアフリー機能を使うのが便利です。
この機能は有料ではありますが、例えば隣県の観光地へ行く場合、出発時から地元局でなく目的地のある放送局に合わせていると、休日などは観光イベントの行なわれている場所から中継があれば、その内容を聞いて面白そうだったら目的地を変えるなんてことも可能です。地方局の番組が面白くなければ、地元局や関東ローカルのラジオを旅の間ずっと聞き続けることも可能です。
ドライバーが運転しながら動画やテレビ放送を見るということは、安全面を考えるといいことではありませんし、電波が届かない昼間でも私のいる静岡から移動しながらではほぼ聞くことが不可能な沖縄の民放局を聞けるというのは改めて考えるとすごいことです(北海道の放送局は電波の状況によってはカーラジオから聞こえることもありますが(^^;))。今後車を使って長旅を考えている方は、ぜひラジコプレミアムの加入を考えてみてはいかがでしょうか。