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スマホを使った電子マネーはどうなっていくのか

一昨日になりますが、BSジャパンの「ケータイ30年~世界は手のひらから変わっていく~」という日本の携帯電話の歴史から今後への展望について解説した2時間番組を見ました。その中で思ったことは2つあります。

一つは、日本の携帯電話市場においてユーザーよりも大手キャリアが通信料や手数料で稼ぐビジネスモデルを確立するに従って、それまで優位に進んでいたかに見えた海外のシステムに追い付かれ、現在は必ずしも日本が世界一と誇れるものは少なくなったということと、もう一つはあえてハードによって実現が難しいような技術を使わない決済手段が普及した中国のしたたかさです。

番組では「アリペイ/Alipay(支付宝)」という電子マネーについて紹介していましたが、番組を見ていて興味を持ったのはその決済の方法でした。スマホ内で自分の持っているアリペイを決済するのに、まずスマホでQRコードを表示する画面を出し、お店側はそのQRコードを読み取ることでスムーズに支払いを行なっていたのです。これならあえてNFC機能をスマホに要求することなく、どんな低スペックのスマホでも自由に電子マネーを使えることになります。お店側にとってもそれは同じです。いちいち専用の読み取り装置をパソコンやスマホ・タブレットに繋がないと決済できないのではなく、今やどんなスマホ・タブレットにも付いているカメラにQRコードを読み込ませればそのスマホやタブレットが決済用のマシンになるわけです。

今まで日本でも多くの電子マネーがありましたが、そこまで普及していないというのは、今でもベクトルが電子マネーを使うユーザーの方ではなく、どうにかしてシェア1番を取って儲けたいという運営会社主導の動きがあるのかと疑いたくなるような、なかなかどのお店でも便利に使える電子マネーが出て来ない状況にあるのではないでしょうか。さらにそうした電子マネーが出てきたとしても、それほど裕福でないユーザーや、個人で行なっているごくごく小規模な商店でも簡単に導入および利用ができるようにしなくては日本のどこでも使えるような電子マネーの実現には結び付かないような気がします。

現代の日本では日本全国ドコモのネットワークを借りて事業をしているMVNOのSIMを使えば、月約300円から500円くらいの低コストでも最大200kbpsで通信できるシステムを使え、SIMフリーの格安のスマホやタブレットは、場合によっては1万円を切る価格で販売されています(中古白ロムで決済だけの目的に使う事しが考えないハードなら更に安く入手可能でしょう)。その程度のコストなら決済専用の端末として導入しやすいでしょうし、それ以前にネット通信可能なスマホを持っていれば、あえてハードの導入をしなくても今の負担を増やすことなく現金以外に電子マネーの決済を行なうことは物理的に可能なのです。

問題は、そうしたシステムを実現されることで既得権益を失うからと抵抗する勢力をどう説得するかでしょう。先述の中国のアリペイのようにユーザー同士の送金に手数料をなくし、お互いにアリペイを持つ人同士なら自由にお金のやり取りができるようになれば、当然今まで多額の振込手数料で潤っている銀行が反対するでしょうね(^^;)。ただ、もし今まで銀行経由で振り込んでいたものが、全て電子マネーでできるようになれば、日本のお役所はかなり助かると思いますし、納税や各種料金支払いも銀行引き落としでなく電子マネーの送金による手続きで済むなら、今まで銀行に入っていた手数料分が多く市場に流れるわけで、それだけでも経済的には良い傾向につながるのではないかとも思えます。

また、いわゆるYouTuberのようにネットからの発信をする人の生活の糧についても、今までのように広告収入に頼るだけでなく、まさに大道芸人のように見て面白いと思った人が電子マネーを送金することにより直接支援することができるようになるでしょう。この仕組みが一般化すれば、一発芸に近い動画作りだけでなく、自分の持っている「芸」をネットで発信することによって直接収入が得られることにも繋がります。経済的な点だけでなく、いわゆる芸能のジャンルだけではなく、音楽などのエンターテイメントの発信源についても、スポンサーの顔色を伺わずとも好きなことができるような状況も来ますし、誰かを援助したいと思った場合にも迅速になおかつ直接支援できるようにもなっていくでしょう。

送金額が少なくても手数料がかからなければ中間マージンをカットして、ユーザーの想いが直接援助に振り向けられますし、多くの人が同時に動けば動くほど大きな力に変わっていくので、現在の社会制度の至らない所を電子マネーが一部解決してくれるような世界も、あながちそう遠くない時期に実現できるのではないかという風にも考えることができます。

ただ、今後の日本の携帯電話の未来について考えてみるにつけ、例えばドコモで「dポイントカード」、auの「au WALLET」、ソフトバンクモバイルの「ソフトバンクカード」はそれぞれが特色があるものの、キャリアの契約に紐づけされているというところに限界があるように思います。各社がそれぞれポイントカードを作るのではなく、携帯キャリアのポイントを共通のポイントや新たな電子マネーに移行可能にすることができれば、日本でも本当にお財布代わりに電子マネーをどこでも利用できる未来が来るかも知れません。

しかし、現状のような群雄割拠が続く時期が長びけば、それぞれのプレーヤーは体力をそがれて倒れるものも出てくるでしょう。その時に満を持して海外から巨大なプレーヤーが利益を根こそぎ持って行ってしまうような未来も一方では見えてくるわけですが、その時の日本は一体どうなっているのか、もしそうなった時のことを考えるのも気が重い未来になっていないことを祈るのみです。

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