ボランティアの全国行脚をする尾畠春夫さんの車中泊術に学ぶ

山口県周防大島町で行方不明になっていた2才児を捜索するために大分から掛け付け、見事に発見した尾畠春夫さんは、この文章を書いている時点ではまさに時の人としてもてはやされています。警察や地元の消防団が人海戦術で探しても見付からなかった幼児を30分で見付けたことに、私自身も本当にこの人は偶然見付けたのだろうか? と思いました。

もしかしたら、週刊誌などはそうした疑念を元にして単なる美談ではない話をでっち上げるような報道もされるかも知れませんが、今回の捜索だけでなく日本国内で大きな災害が起きた時には手弁当で押しかけるようにボランティア活動を繰り返している事実を考えると、今後その活動が注目されることによって今回の事についての真実も見えてくるのではないかと思います。

ところで、私が今回の事件で注目したのが尾畠さんは現地の人達の生活には介入せず、自分のボランティア活動を行なうための費用や活動拠点は自ら用意しているということです。普通、ボランティアという事で出掛けても、住民の方々から活動のお礼として飲み物や食事、お風呂や宿泊のような「お接待」を申し出られた場合、ついその言葉に甘えてしまいがちです。もちろん、住民の方はそれだけ感謝の念を何とかして伝えようと思ってご接待をしてくれると思うのですが、「ボランティアの方には何かしらのお礼をしなければならない」という想いがあるとしたら、これは違うのではないかと思います。というのも、災害に遭って日々の暮らしにも困るような方については、そうしたお接待のために用意する品々を買うのも負担になりえるからです。

今回、テレビカメラの前で幼児の祖父と話をしている中で、何とかしてお風呂にでも入ってもらおうとする祖父の申し出をことごとく断り、そのまま帰っていく姿をニュースで見ましたが、それが尾畠さんのポリシーということで、もし今後私たちがボランティアとして困っている人がいる場所へ向かうような場合にはぜひ参考にしたい行動の一つです。さらに、これだけ頻繁に全国に出掛けて長期間のボランティア活動を行うことができるというのは、「車中泊」ありきだということにも親近感を覚えます。

私が今乗っている車は1300ccのホンダフィットという乗用車ですが、ボランティアとして全国に出向く尾畠さんは、後部座席を倒せば大人一人が十分に足を伸ばして寝られるだけのスペースを簡単に作れることでエコノミークラス症候群になる心配なく車中泊ができ、さらに車を持つコストが最も低いと思われる軽ワゴン車を使って全国を回っているとのことです。費用については主に年金があてられているということですが、日々の食費がどのくらいかということにも寄りますが、元魚屋さんということでご自身で簡単な調理をすることができるという風に仮定すると、車の中で買ってきたものを食べる程度では、それほどお金も掛からずに現地に出向き、活動を継続することができるでしょう。さらに現地の方へ申し出をすることが必要になりますが、車を停めて車中泊をする場所さえ現地で確保することができれば、住民の方々とトラブルが起きるリスクも減らすことができます。

さらに現地で車中泊をしてボランティア活動をすることのメリットとしてあるのは、作業を終了し食事をすればその場所がそのまま寝床になるので、すぐに寝られて朝は早朝から活動することも可能になることです。これは、普通の宿舎に泊まってボランティア活動をする場合と違って、特に夏は日中が活動に適さないくらい暑くなるので、まだ涼しい朝の貴重な時間を活動にあてられるというメリットです。

さらに、今回の場合は尾畠さんが幼児を見付けた時に地元の人や警察の捜索活動が始まっていたのかがわかりませんが、人がそこまで多く山に入っていない早朝だからこそ、ちょっとした現場での違和感に気付いて幼児の発見につながったということも、もしかしたらあったのかも知れません。全ての生活の拠点を車の中に集約することで、普通の旅の時でも時間を有効に使えるということは車中泊の旅をしていると実感するところですが、集団でなく個人で小回りが効く活動をする場合、車中泊前提で出掛けるというのはそれなりに役に立つこともあるということが今回わかったような気がします。

ただ、尾畠さんのように全国を回っていて、どこへ行ってもそれなりの「顔」になっている人ではない場合、いきなり車で乗り付けて「ボランティアします」と言っても早朝のまだ暗いうちからごそごそしていると、いわゆる火事場泥棒の類と誤解される可能性もあります。実際に私達が行く場合は、ボランティアの受け入れ先に事前にアポイントを取って、少なくとも車を安全に駐車できる活動拠点が提供されるかどうかの確認くらいはすべきでしょうし、現地には活動を行なう前日の夕方くらいまでには到着し、現地スタッフとの打ち合わせを行なった上で活動をしないと、逆に現地の人にうさんくささだけを与えてしまうことにもなりかねません。現地の人の役に立ちたいと思って出掛けても、逆に現地の人にあまり良く思われないということにならないように十分ご注意下さい。


カテゴリー: 防災関連ニュース | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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