セレナe-power が今後の車中泊車登場のきっかけになるか

日産のノートに搭載された「e-power」という仕組みは、1200ccのエンジンを積んではいるもののそのエンジンで車を動かすのではなく、全てガソリンを使った発電にあてることで、普通の車と同じようにガソリンを給油して走りは電気のモーターでという「ガソリン発電機を積んだ電気自動車」というものです。先に「リーフ」の方を買ってしまった方は、リーフから電気を自由に使えるというメリットはあるものの、電池の容量が少なくなったら時間を掛けて充電する必要があるので、現状のノートe-powerを羨ましく見ているかも知れません。そんな中、コンパクトカーより大きいミニバンの「セレナ」に「e-power」の仕組みを付けた車がデビューするということで話題になっています。

「セレナe-power」は、エンジン自体はノートと同じ1.2リッター3気筒エンジンを積んでいるものの、車体が大きく重くなり、さらに7人乗りという多人数を乗せて走ることを考えた出力を維持しているといいます。というか、電気自動車は蓄電池の出力によって能力が変わってくるので、エンジンはあくまでも電池容量が少なくなった場合に充電するためのものなので、大きくなってもそれくらいのエンジンで十分ということなのでしょう。

現在は公式サイトを見ても基本的なことしか書いていないのですが、ここで気になるのは燃費でも自動運転システムでもなく、シートがどのように畳めて車中泊しやすいのかということにこちらのサイト的には当然なるのですが、内装の様子を見る限りでは今までのセレナと変わらない感じになっています。

ちなみに、現行のセレナについて車中泊の老舗サイトの「車中泊に適した車」ではミニバンの中では「C」ランクで「ある程度の工夫が必要」となっています。フルフラットにしても凸凹する段差があるので板や固めのマットでフラットな床を作って利用することが推奨されています。あとは高いお金を出して車中泊専門業者さんの作ったキットを導入するかというところになっているので、日産の方ではこれだけ大きな地震が続いているのにミニバンの中でペットとともに長期間過ごす人がいるかも知れないということは考慮されていない(ただ、こうした考えはあくまで車中泊メインに車を選んでいる人間の意見であり、多くのレジャーや日常生活の中で車を使うニーズは十分満たしていますので、その点に異論はありません)ということになります。

そして、現行のセレナにはUSBソケットが付けられるということなので、このセレナe-powerでもそのくらいの電気使用はできそうな気がします。ただ、先行した「ノート」では車の中で家電が使えるようなコンセントが付かなかったこともあり、今回のエンジンの出力がそのノートと同じであるセレナについてもあまり期待しない方がいいような感じです。

というのも、ネット上の口コミサイトからの情報で恐縮ですが、家庭用の家電が使えるコンセントはメーカーオプションで(「マルチアウトレット」定価23,000円)、さらに出力は100Wということで、インバーターを使ってコンセントを使うのと大差ないものなので、これから購入を考えておられる方はあえてこのオプションを加えなくてもいいのではないかと思われるくらいのものになっています。

さらに現行のセレナと同じくフルフラットにした時のシートの凹凸の問題がありそうなので、この車を車中泊車に仕上げるという目的で購入するというのは、もう少し情報が出るまで待つか、それこそ座席を取り外してフラットな空間を作ることができる商用バンにe-powerの仕組みとコンセントが付くまで待った方がいいのではないかという風に私は思います。

もし今、車内で電子レンジを使いたいと思って買うなら同じコンセプトで、後部座席を畳むと一応フルフラットになり、満充電なら夏にエンジンを掛けずにエアコンが使え、冬でも1500ワットのコンセントが付いているので電気毛布が使える(当然電子レンジと冷蔵庫を乗せておけば食事にも困りません)三菱のアウトランダーPHEVの方がいいのではないかという感じは個人的にはします。

まだ発売前ということで、情報は断片的にしか私も見ていないのですが4WDの設定がないというのも気になるところです。そもそも、今後日産はアウトランダーPHEVをライバルと見ていくのかということも気になります。というのも、セレナe-powerはガソリンタンクの容量が55リットルで、ガソリン満タンの状態で1,000キロの連続走行が可能であることをうたっているので、一回の走行距離を減らす原因になる電池を車を動かす事以外に使うことは元々推奨されないでしょうし、四駆にすることで失なう事もあるというメーカーからのコンセプトの表れと取ることもできるからです。

ただ個人的にはエンジンで発電するというのはライフラインが切れた時に車が発電所の役割として使えるようになるので、早くアウトランダーPHEVのような車を日産にも出してもらいたいと思っているのですが、他社の方が先にそんなレジャーにも災害対策用としても便利そうな発電機付きの電気自動車のジャンルに入ってくることになったら、せっかく先行している日産が私の思っているようなニーズを持っているユーザーを逃してしまうのではないかという事も気にかかります。

こうした車自体が発電能力を持つ車についてはもう一つのニーズがあります。先日ニュースで見たのですが、昔宅配業者が専用の車としてメーカーに発注した車内で立って作業のできる配送車を改造して「キッチンカー」として再販売して好評だということです。よく移動販売のお店として見たことのある方もいると思いますが、それらの車にはキッチンを配置しプロパンガスを組み込んで車の中で調理ができるようになっています。

ただ、車体自体は古いものの再利用であるので、今後車内で電気が使え電池容量が少なくなったらエンジンを回して充電したり、外から充電することで電子レンジやIH調理器が使えるミニバンが電気自動車として登場してきたら、将来のキッチンカーのベース車としてヒットする可能性もあります。車中泊趣味の人たちは、そうした流れで出てきた車があればそれを小さなワンルームの部屋に改装すれば、究極の車中泊車となる可能性もあります。あとはトイレさえどうにかすれば、電気の通るガレージを基地にして(普段はそこから充電して走行および家電を動かせるので)そこから日本全国どこでも遊びに行くような生活をしやすくなります。個人的には車内でパソコンを使える書斎があれば、どこでもブログを更新することができますし、そういうのもいいかなと思います。

とにかく、今回の日産のセレナe-powerの発売により、普通に電気自動車が使われる環境ができてくれば、様々なニーズを狙った多くの電気自動車が日本でも走るようになるでしょうから、今後のユーザーの動向や不満点などを汲んだ、さらなる魅力的な機能を持った車も出てくるのではないでしょうか。そんな旗振り役を発電機を搭載した車である日産のe-powerシリーズや三菱のアウトランダーPHEVに期待しています。


カテゴリー: 車中泊に適した車種 | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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セレナe-power が今後の車中泊車登場のきっかけになるか」への4件のフィードバック

  1. 匿名

    基本的に、発電しながら乗る車なので、
    電気を大量に貯められるようなバッテリーは積んでないんだよ。
    目的外の事を求めて優劣を比較するのはどうかと思うよ。

  2. てら 投稿作成者

    コメントをいただき感謝します。

    本文の中にも書かせていただきましたが、発電した電力を車の推進に使うというのは今回のセレナのコンセプトで、ガソリン車と比べても相当燃料を節約でき、充電をしなくても良い電気自動車としての走りも楽しめるファミリーカーとして良くできている車だと思っています。ただ、たまたまコメントを頂いたタイミングで北海道で大きな地震が起き、停電の影響で多くの人が困っているような中、セレナとは別に災害時に電源供給できるようなコンセプトの車もあってくれてもいいのにと思って書いたものです。もし優劣を比較するような感じで読まれていたとしたら、こちらの書き方が悪かったのではないかと思いますので、その点についてはお詫びいたします。

    元の内容を書いてから世界の車についての状況も変わり、ハイブリッド車や水素自動車、そしてクリールディーゼル車よりも電気自動車の方に世界のメーカーがシフトしていく中で、このセレナで採用された方式について、この方式で進化していくのか、いわゆる「リーフ」のようなプラグから充電するタイプが主流になるかということも考えた上で車を選ぶことが必要になってくるのではないかと思います。充電用プラグの規格で中国との提携を発表し、もしそれが世界標準になれば、日産をはじめとする日本のメーカーがどう動くのかということも気になります。

  3. sugi

    e-power、電気という視点の車だけに様々な使い方を期待するのは、昨今の生活スタイルからしても自然なことのように思います。折角e-powerを手に入れたなら、走るということ以外にも色々な付加価値を持たせることで”商品”としての利便性は増します。ただ、残念ながら走ることとそれ以外の用途に対応するコンセプトを両立させるには、若干無理があるのかもしれません。個人的にはオプションでもいいから大容量のバッテリ-を載せてほしいと思いますが、多様性を求めるニーズがどこまであるのか、といったことまで踏み込んで作る余裕はメーカーにはないと思います。

  4. てら 投稿作成者

    sugi さん コメントありがとうございます。

    日産のe-powerのコンセプトとしては、充電する必要のない電気自動車を作り、充電スタンドを探しながら走るストレスを消すということがあると思います。電気自動車の加速や減速の感じは当然ガソリン車とは違いますし、ハイブリッドとは違う電気自動車を今のガソリンスタンドというインフラに合わせて乗るには最適な車であることは確かです。

    ただ今後、こうしたe-powerの電気自動車が主流になっていくのか、充電するタイプの車が主流になるのかというのははっきりせず、世界の中の電気自動車のイニシアチブを取ることを模索して、最近になって中国と日本でプラグの形の共通化をはかっているというようなニュースを聞くと、利用する方もですが、作る方としてもどういう車が今後の主流になるのかわからない中でそれなりの車を出さなければならないというのは本当に大変なことだと思います。

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