公営のままがいいか民営化がいいのか

このブログで何回もお伝えしている静岡県の清水港から西伊豆の土肥港を結ぶ「駿河湾フェリー」の運行について、現在運行している会社が2019年3月で航路を廃止すると発表したことで、静岡県がフェリーの存続を見据えたプロジェクトチームを作り、今後どうするのか考えているということで、その状況を地方ニュースが入るたびにここでも紹介しています。

先日は、伊豆の観光関係者の方々が存続を県に陳情していることがニュースになっていましたが、何らかの対策をしない限り、航路自体は赤字体質を逃れることはできないので、静岡県の判断になりますが、そのまま廃止ということも十分考えられます。

普通に考えると、採算が取れないなら赤字を垂れ流すよりもすっぱりやめるのが筋だということになるかも知れませんが、その考えを貫き通すと過疎化が進む地方の村や町の中には自身で住民サービスをやりくりできないところもあります。私はそのような地域に住んではいませんが、観光という名目で訪れることもありますが、世の中が都会だけになったら田舎らしく作ったリゾートが残るだけになってしまいかねません。

今後、そうした土地で生活している人たちをどうするのか、政策次第で変わることになるでしょうが、あえて赤字路線でも交通手段を残すことの意味というものもあるということで、私の住む静岡市のケースを今回紹介させていただきたいと思います。

私は実際に乗る機会がなかったのですが、かつてJRが国鉄と呼ばれた時代に、全国で一番短い路線が静岡市にありました。鉄道に詳しい方はご存知でしょうが、1984年に廃止された清水駅と三保駅を結ぶ「清水港線」です。

この路線は距離が短いだけでなく、私が知った時には一日一往復しかしないダイヤになっていたので、よほど鉄道が好きでなければ乗りませんで、結局当時は何の感慨もなく廃線になったニュースにも無関心でした。元々は三保方面にある工場まで行く貨物支線として始まり、荷物の輸送が鉄道からトラックに変わる中でその役目を終えたと見られて廃止になったわけです。

しかし、1984年で廃止されずに地方の足として赤字覚悟で残していたら、また変わった運命を清水港線はたどったかも知れません。その9年後にサッカーJリーグが発足し、初年度からご当地の「清水エスパルス」がJリーグ最初の10チームの中に入りました。現在の清水エスパルスのホームスタジアムは、清水港線の廃線跡から歩いてもそれほどかからない所にあります。今までもそしてこれからも、全国からエスパルスとの対戦チームのサポーターがやってくるのですが、現在のように渋滞が起こったら帰りの時間が読めないシャトルバスでの移動よりも、試合の時には臨時便を出したりしてスタジアムにいる人の多くを時間通りに運ぶことができる鉄道の方が好まれるに決まっています。

さらに、2013年には富士山が世界文化遺産登録された際に、富士山から遠く離れていながらも美術作品などで富士山とセットで紹介されることが多く、その眺望も素晴らしいということで三保の松原が世界文化遺産に選ばれることになりました。そのため、今までとは比べものにならないくらいの観光客が訪れることになったのですが、今までは松の群生するすぐそばまで観光バスで行けていたのが、あまりにも多くの人が来ることによって松の生育に影響を与えるということで、観光バスの駐車場から三保の松原までかなり歩くことになってしまいました。

もし清水港線がエスパルス人気のお陰で存続していたとしたら、今も公園として残る旧三保駅からなら観光バスの駐車場より少し遠いものの、十分歩いて駅から三保の松原に行けるので、エスパルスの試合がない日でも週末を中心に観光客が安定して訪れる場所になっていたかも知れません。基本的なことですが、常に鉄道の路線として駅から歩いて行ける名所があれば、その観光地が知られていればなおさら、「静岡まで来たからついでに行ってみよう」と思う人も増えることが考えられます。特に三保の松原は世界文化遺産登録前から知られていた名所でしたから、なぜ観光路線として残すことができなかったのかとも思えます。

同時に、儲かるのは観光業者だけで鉄道会社は赤字を埋めるだけということになるとそれはそれで問題です。ちなみに、同じ日に廃線となった路線を第三セクターという形で路線を維持したのが岩手三陸鉄道の南リアス線と北リアス線になり、これも長い間赤字路線として苦労して維持されていましたが、NHKの朝ドラ「あまちゃん」の効果で多くの人が訪れるようになったのは皆さんご存知の通りです。

個人的には「駿河湾フェリー」は「清水港線」と同じ道を辿るようだと、もし浜岡原発で深刻な事故が起こった場合、住民を逃がすルートの一つが失なわれるという点もあるので、個人的には静岡県や私たち周辺住民の力も加えながら存続への道を探って欲しいものですが、なかなか背に腹は代えられないというのも事実です。改めてどんな結果が出てくるのかを今後も注目していきたいと思っています。


カテゴリー: 旅コラム | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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