災害の記憶を留めるためのモニュメント

私が東北地方へ車で出掛けたのは、今から5年前の2013年5月でした。東日本大震災から2年という月日が過ぎていましたが、まだ津波の恐ろしさを感じさせるような場所は随所に残っていて、さらに思ったのは写真に写らずビデオを見ても感じることのない「匂い」がしました。それは、多くの人が被災した象徴的な場所で、そこでは多くのお供えやお線香がたかれていて、私が感じたのはそのお線香の匂いだったということを思い出します。

震災から約7年という時間の経過の中、そこで暮らす人々の生活も徐々に変わっていき、まず大切なのはその場所に生きる人達が安心して生活できる街づくりになってくるのではないかと思います。5年前に東北を訪れた中で一番印象深かったのは岩手県の陸前高田市でしたが、そこではまだ「奇跡の一本松」はまだそのまま立っていましたが、もう一つ印象的だったのが、津波に耐えてそのままの姿で立っていたセルフスタンドの看板でした。

当時は一本松のインパクトがかなり大きかったためそこまで注目されることはなかったと思いますが、このスタンドでは同じ場所で営業を続けていて、当時の津波の高さをこの看板で知ることができたり、多少のへこみはあったものの倒れることなく存在していることは話題になり、さらに当時の津波の高さを看板に表示するなどして今でも残る数少ない災害遺産としての存在感は抜群でした。

そんな看板ですが、スタンド自体が現在の場所がかさ上げされることによって移転を余儀なくされたということで、7月31日に撤去されたという事がニュースになっていました。新聞に掲載されていた看板の写真を添付しますが、実際に現地に入られた方はあの看板かとおわかりのことと思います。

普通、こうした建造物はいったん撤去されたらそのままになってしまうのですが、この看板については震災の物凄さを伝えるためにスタンドを運営する企業が新しく移転した場所に改めて建てられるということです。ただ、前と同じ高さの約15メートルではなく、その半分くらいの高さになるということです。

このニュースを聞いて思い出したのが、私が陸前高田に訪れた時に仮店舗で営業していた喫茶店の方が、仮店舗での営業は昨年から今年にかけてで営業を終了し移転する必要があると言っていたことでした。恐らく看板のスタンドも同じ理由で現地で営業ができなくなったのだろうと思いますが、震災から7年、仮店舗でも営業していたお店は少なからずあったように記憶していますが、そうしたお店は無事に営業を続けられるのかという事が気になります。大手のチェーン店なら何とか資金的に移転する費用は出るでしょうが、個人営業のお店はなかなかそうは行きません。私が過去に訪れたお店では広く寄付を募ってお店の建設資金を集めているそうです。

日本全国で多くの災害が起こっている中、つい私たちは過去の大きな天災の事を忘れてしまいがちになりますが、まだまだどこの地域でも災害の影響で苦しんでいる人がいるということを改めて考えさせられた今回のニュースでした。できれば陸前高田を含む東北地方には再訪したいと思っているのですが、なかなか出掛けられないのが辛いです。


カテゴリー: 地域情報・イベント | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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