著作権を無視した海賊サイトを利用すると何が問題なのか

最近は、映画を見に行くと映画をカメラを使って録画することについての注意喚起とともに、違法にアップロードされた著作権のある音楽データや漫画などの「無料配布」をうたうサイトを利用しただけで罰せられるという事も出てきます。もちろん著作権者の権利を守ることで今後も良質なコンテンツを利用できるシステムが機能するわけで、世の中の人全てが海賊版のコピーを無料で利用するだけになってしまっては、入って来るはずの収入がオリジナルのコンテンツを作っている人に入ってこなくなれば、結局はそのコンテンツを楽しもうとしている人が困ってくるわけです。

ただ、そうは言っても直接的なリスクではないと感じる人が未だに様々な海賊サイトを利用しているのだろうと思いますが、先日上記のような事以外にも、海賊版を提供するサイトにアクセスすることにリスクが有ることを知りました。そのリスクというのは法律違反で検挙されるような恐さではありませんが、この話をニュースで知った時には、決して自分が巻き込まれないように注意しようと思ったことは確かです。

これは、インターネットの接続が当り前になった今だからこそできることですが、それまで海賊ソフトのマーケットというのはオリジナルをコピーしたコンテンツを売りさばくことで利益を出すことであったと思うのですが、なぜ無料で音楽や漫画をダウンロードできるような仕組みになっているのか、不思議と言えば不思議です。

悪徳サイトの中にはアクセスするパソコンにウィルスを仕込むことで個人データを抜き出してクレジットカード情報やネットバンクのログイン情報を入手し、その情報自体を売ったり直接お金を盗むようなやり方もありますが、これらの犯罪行為は最終的にその痕跡を掴まれて検挙される恐れがあるので、他人にババを引かせて逃げ切れるならいいのですが、やはり犯罪は犯罪です。そこで、実に巧妙な事を考えた人がいて、その人が海賊サイトを作って多くのアクセスを集め、コンテンツのダウンロードを促すことで利益を上げる方法を駆使しているのです。

ちょっと引っぱってしまいましたが(^^;)、その方法とは「仮想通貨の採掘作業」なのです。ビットコインだけでなく他の仮想通貨にも「採掘」という概念があり、ネットワーク上で計算・記録する膨大な作業をやってくれた人に対する報酬として仮想通貨そのものを与えるという仕組みが定着しています。こうした採掘というのは個人の力だけでやることは難しく、大きな企業では倉庫を借りて、その中に数百台のサーバーを置き膨大な計算を行なうことで仮想通貨をゲットする事を仕事として行なっているところもあります。倉庫を借りてサーバーを作り、電気代を払っても仮想通貨によって採掘できる金額の方が多くなることもあるんだとびっくりした記憶があるのですが、今回問題になっている海賊サイトを作った人は、お金を掛けずに仮想通貨を採掘することを目的に魅力的なコンテンツを不法に手に入れ、何も知らないユーザーがサイトにアクセスし、ダウンロードしてくれることを狙っているのです。

どういう事かというと、多くの個人ユーザーのパソコン一台一台がまとまるに従って全体でできる計算量は大型コンピューターにも匹敵するようなものにもなるということはすでに知られていることです。サイトアクセスやダウンロードの際に、個々のユーザーのパソコンのCPUパワーを少し使わせてもらってパソコンが使われていない時に演算を行なってその結果をサイト管理者に送信することで、本来は多額の費用がかかる計算をほぼ自分のサイトを訪れる人にやってもらえるわけで、一般ユーザーは他人が仮想通貨を「採掘」するために利用されるだけ利用されているというわけです。

ニュースで具体的に出てきたのは、仮想通貨「Monero(モネロ)」を採掘するための「Coinhive(コインハイブ)」をサイトに仕込み(専用のJavaScriptコードをサイトに埋め込むと、そのサイトを閲覧した人のPCのCPUパワーを使い、仮想通貨「Monero」を採掘)、主に漫画をダウンロードしているうちにしっかりと「モネロ」の採掘をさせられているケースが出ているわけです(電子書籍のダウンロードサイトを運営しているサイト主催者が、モネロを採掘した人にダウンロードするファイルを提供する仕組みがあるので今回問題になっているのだそうです)。ただしこの仕組み自体が悪ということではありません。

というのも、これをネット上での収益発生モデルの一つと考えると、広告を見ないでもある一定の報酬をサイト管理者に与えることができ、このブログを含めて広告が入るページが好きでない人にとっては、多少CPUパワーを使って採掘に協力してあげても広告のないページが閲覧およびダウンロードできる有難いシステムになるかも知れませんが、やはり効率よく採掘を目指すことにすると閲覧者のパソコンに過大な負担を掛けることでもあり、このような仕組みを利用者に隠して行なっているとしたらそこは問題になります。

今後は動画をストリーミング再生している間に採掘するようなことも、ゲームをプレイしている時に採掘するような形での提供も今後できてくるようですので、「書籍」「動画」「ゲーム」という対価をタダで得るために仮想通貨の採掘に協力するということに納得の上で行なうならいいのですが、コンテンツそのものが公式なものでない海賊版だったり、アクセスしてきた人に知らせずに行うことで様々なトラブルが起こる可能性は出てきます。

したがって、Coinhiveが仕掛けられた海賊サイトから違法にコンテンツをダウンロードすると、今までは著作権法違反に問われるだけでしたが、今後は自分のパソコンをいいように使われて他人にお金を儲けさせるのに手を貸すことにもなります。本当かどうかわかりませんが、一部のサイトが特定のイデオロギーを持つ団体の資金源となっているのではないかという話も出ていますので、特にインターネット上ではしっかりと自分のポリシーを持って語られている方が、それとは真逆の考えで活動している団体の活動を支援するというような事も今後起こりうるので、単に無料で漫画が読めるからいいということでないことを多くの人に知ってもらいたいと個人的には思います。

で、実際このスクリプトをサイトに貼った場合にどのくらい儲かるのかということが気になると思いますが、私が見た2017年10月に書かれた「Coinhive」について紹介しているサイトでは仮想通貨の変動はあるにしてもページビューが1000あっても約1.5円しか稼げないとのことなので、一般のユーザーにはあまり旨味はないようです。しかしマルウェアや違法ダウンロードサイトや、数の揃った違法電子書籍無料配信サービスサイトは一般ユーザーには集められない多くのアクセスを稼ぎ出しますので、それなりの報酬は出てくることが予想できます。そうした事を受けて、一部のアンチウィルスソフトでは「Coinhive」それ自体がウィルスとして検出される場合もあるということなので、一定の評価が社会的にされるまではこうした仮想通貨採掘の方法には素人が手を出さない方が無難だと思います。

もしこうした仕組みが将来的に正式に著作権の対価を権利者に届けられる仕組みと連動し、ユーザーのパソコンのCPUパワーをほんの少し使うくらいで動作に影響を与えない程度で行なわれるようならいいのですが、先に悪質な海賊サイトに使われているというのは本当にあざといというか、ダウンロードしようとしても全くダウンロードされず、採掘に協力しただけなんていうケースも今後起こってくるかも知れません。もし特定のサイトにつなぎながら他の作業をパソコンで行なおうとしてパソコンが爆遅になった場合は、知らないうちに自分が他人のために仮想通貨を採掘させられてはいないか疑ってみることも今後必要になってくるかも知れません。


カテゴリー: 通信サービス全般ニュース | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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