AppleとFBIの対立の先にある恐怖

 すでに多くのメディアで報じられていて、ネット上でも様々な意見が上がっていることから御存知の方も多いと思いますが、アメリカで起きた銃乱射事件の犯人が持っていたスマートフォン、Apple社のiPhoneについてAppleとFBIの対立が論争を生んでいます。

 FBIは従来の手法に従って合法的に容疑者の使っていたiPhoneを入手しました。さらにその中にあるメールやSNSの発言記録、その他のファイルに入っている写真やメモなどを入手して事件の全容解明のために使おうと思っていたところ、何とFBIがそのiPhoneのパスワードをリセットしてしまったというのです。

 そうなるとiPhoneの中を見るためには端末にかかっているロックを外すことが必要になるのだそうで、FBIが申し立て、裁判所からApple社に対して、容疑者のiPhoneに限った形でロックを解除するためのプログラムを提供することが命じられました。Apple社は命令を受け、他のユーザーの個人情報が筒抜けになる可能性を検討した結果、その命令に応じないことを発表し、FBIとの関係がこじれています(ここまでの経緯で、記述の内容が明らかに間違っている点がありましたら、ご指摘いただければ訂正します)。

 この件についてはさまざまな憶測もからめた報道がされていますが、中にはすでにFBIは容疑者のiPhoneの中味を把握しているので、捜査資料の入手という意味では必要がないのに、あえてAppleに解除プログラムを提供させたいだけなのではないかという話まであるほどです。

 FBIが解除プログラムを「活用」し(提供を受けたプログラムを基にして新たに開発を行なうことができるのではないかという話も出ています)、独自のiPhone汎用解析プログラムをFBIが生み出すことができれば、自由に任意のiPhoneをハッキングし、捜査情報を得ることができるようになってしまうのではないかという危惧もネット上では言われています。本当にそんな事になってしまったら、Apple社が巨額の資金を投じて作ったシステムの根元が揺らぐことでApple社の業績にも影響が出るかも知れませんし、もう一つ言えることがあります。

 今回の騒動の元となった銃乱射事件は、テロ事件という呼び方をされていても、組織化されている構成員が計画的に行なったものであることは考えにくく、海外で頻発するテロ事件に感化された犯人が自分達の意志で起こした事件という意味あいが強いと思われます。もちろん、そうしたアメリカ国内で生活していたり、アメリカ本国に入国できる人の中でどういった経緯で危険な思想に感化されるに至ったのかを、犯人のスマートフォンの中の通信記録を分析することで類推し、今後同様の事件の発生を未然に防ぐ効果が期待できることは確かにあるでしょう。

 しかし、アメリカが最も恐れる、「本物」のテロ組織の構成員は、後に証拠を残さないように徹底的に訓練していると思いますので、もし不幸にもアメリカで組織のからむ大規模なテロ事件が起きてしまったとしても、スマートフォンの解析から事件の真実がわかる可能性はそう高くはならないでしょう。結果、直接テロ細織とは関係ない人たちが不当にスマートフォンの中味を覗き見られるというケースばかりが増える事にもなりかねないわけで、個人のプライバシーなど吹けば飛ぶようなものという現実が明らかになるだけなのかも知れません。

 今後、もしFBIの言い分が通ってAppleが技術提供をすることになったら、本当に人に知られたくない事についてはスマートフォンの中には決して残さないようにして、メモを読んだら焼却するとか(^^;)、そこまでしないと必ず情報は漏れるものだと思った方がいいような気がします。芸能人のLINEの内容が全てばらされたように、調査機関の人間に自分だけが知っている恥ずかしい事が回し読みされる可能性も全くないとは言えませんし、今後の騒動の推移を見ながら、思い当る事のある方は必要以上にスマホに頼ったやりとりはしないのが無難でしょう。


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