予感はしていたのですが、先日Yahooが代替のACアダプターを配布したばかりというタイミングでYahoo!BBがADSLサービスの終了をアナウンスしてきました。予定だと2024年の3月末ということですので、あと5年は使い続けられるということになります。
自宅でのインターネット回線の変遷を考えていくと、ここにきてのADSL回線自体の終了というのは感慨深いものがあります。基本的にインターネットというよりもパソコンをモデムに接続して、閉じられたコミュニティの中でコミュニケーションを取っていた「パソコン通信」の時代には、固定電話の回線を接続時には繋ぎっぱなしにしていたため(当然携帯電話も個人ではない時代です)、自宅に電話が掛かってきた場合にネットに接続していると相手からは「話し中」状態になってしまったため、家族にも迷惑を掛ける場合がありましたし、接続している時間は市内通話の料金がかかりますので、つい切るのを忘れて接続し続けてしまい翌月にはすごい料金の請求があったなんて、今からでは考えられない状況もありました。
その後、「テレホーダイ」という特定のアクセス番号に電話してネット接続する料金を定額化するプランが出たものの(このサービスも別にプロバイダ料金がかかりました)、夜11時から朝までしか定額料金が適用されなかったので、このプランを契約していてもネットの切り忘れには注意しなければなりませんでした。
NTTではこうした不具合を解消するため、当時の電話回線に代わる新たな回線であるISDNを整備して提供しました。この回線は一つの回線を複数回線のように利用できるので、新しい電話番号のみを取ってファクシミリ用の電話番号を持ったこともありました。その頃にはISDNによるインターネット接続も時間を気にせず、従来の月38,000円ほどかかっていた専用線よりも安く5千台くらいで使えました(もちろんこのサービスも別途プロバイダー利用料が必要)。さらに、このサービスのスピードは64kbpsという今のスマホの低速規制時の半分しかスピードが出ず、文字が中心のパソコン通信のサービスでは使えていたものの、その後音楽やフラッシュ動画、さらにニコニコ動画やYou Tubeという動画の閲覧に人々の興味が向くに従って、人々は動画の閲覧にも耐えられる高速回線を欲するようになります。そうしたインターネットについての意識の変化を敏感に感じ取ったYahoo!BBが行なったのが街頭でのADSLモデムの無料配布のサービスだったのです。
ADSLのサービスはISDN回線では利用できず、高速なADSLサービスを使いたい人は改めてNTTにお願いして新回線のはずのISDN回線を従来のメタル回線に戻してもらう必要がありました。さらに、回線を複数のように使えたISDN回線から元の一回線に戻ったので、新たにメタル回線を一本引かない限り、ファクシミリ用の電話番号を使うことが難しくなりました。今から考えてみると、こんな無駄な工事をして回線を元に戻すということ自体、もう少し考えて家庭用のインターネット回線を整備できなかったのかという事を感じますし、今回のADSL開始から光回線に変更させようとする強引な勧誘というのは、まさにISDNからADSLへの変化の時を見るようで、今でもあまり進歩がないなと感じてしまいます。
私のネット環境ではだいたい下りで安定して6~8Mbps出ているのですが、このくらいのスピードがあればパソコン・スマホ・テレビで同時にネットを使っていてもテレビの大画面で様々な動画サービス(主にHD画質)を見るには十分です。さらに、ADSLの2倍以上の料金がかかる光回線であっても利用が集中する夜間にいたってはADSL並みのスピードまでネット接続速度が落ちてしまうという話も出ています。逆にADSLは強引な光回線の勧誘の成果が出ているのかどんどん利用者が減っている分、回線的には快適になりつつありますので、今回のニュースが出たからといってADSLをすぐに解約するよりも、サービス終了のぎりぎりまで利用し続ける気持ちでいた方がいいのではないかと個人的には思います。
同じような事は何回もこのブログで書いていますが、問題になるのは2024年4月以降、自宅のインターネットをどうするかということです。ただ、冷静になって考えてみると、現状のままADSL代替とされる光回線の利用金額がADSLの倍額水準のまま5年後を迎えたとすると、スマホ代すらまともに払えないと音を上げる家庭の中で固定回線を維持できない人が出てくるのではないかと思われます。
過去とは違い、今のインターネット回線というのは、オリンピックのチケット申し込みにネットしか使えないようにしていることからもわかる通り、もはや電話に代わるライフラインとして使われていると言ってもいいでしょう。さらに今まで、モバイルインターネットのトラフィックを抑えるために、「自宅に戻ったら自宅回線でWi-Fiを」という形で利用を分けることも推奨されてきましたが、そもそも固定インターネット回線が高価で加入できない人たちがいるということになると、本当にひどい「格差」の時代になってしまうのではないでしょうか。儲けたい通信会社の人は別にして、国の政治を司る政府としては、それこそ今のADSLくらいのスピードのサービスが今と同じか少しは安くなるような形で普及していくように考えてくれないと、ネットを使える・使えない事についての差が広がり、ネットが使えない人についてはもはや未来が無くなってしまうと言ったら言い過ぎでしょうか。個人的にはそのくらい、ADSL代替をどうするかということは日本の将来について考える中では大きな課題のように思えるのですが。
特に、現状においてもブロードバンド環境で光回線を選べない地域に住んでいる人もいるため、今から光回線を全国にくまなく引くよりも、大きな基地局から無線で接続できる安価なインターネットを普及させていくべきではないかと思います。はっきり言って、5年後にそんなインフラ整備が済んでいるようでないと、都市では快適でも地方を見捨ててそれで良しと考えていると思わざるを得ません。さすがに今の日本の社会ではそこまで低所得者をいじめるようなことはしないのではないかと、個人的には楽観視していますが、果たして5年後にはどうなっているでしょうか。
ですから、今後さらにソフトバンクはSoftbank Airに変更させようと勧誘を仕掛けてくるとは思いますが、ここまで書いたように現在と同じかそれより安い価格で今の水準と同じくらいの代替サービスが出て来ない限りは、個人的にはADSLのサービス終了までADSLにお付き合いしようという想いが強くなりました。ADSLをまだ利用している方々はいかがでしょうか。