台風の影響は西日本だけでなく東日本や、今後の進路によっては北海道にまでおよぶ、日本全国での問題になっていると思いますが、そんな中で「天災」ではなくどう考えても「人災」としか思えないことで社会システムが滞っているニュースが国内でも海外でもこのお盆には起こってきています。
国外は香港のデモが空港の中までに入ってきて、飛行機が飛ばないなどの実害も出ているようです。また、国内では東北自動車道の佐野SA(上り)でのレストラン・土産物店の営業が止まってしまっています。
状況を知らないで現地に行かれた方はびっくりするだけでなく、実際に旅行の予定が変わったり、当てにしていたことができないということで、大いにストレスになり怒りがこみ上げてきた方もいらっしゃると思いますが、これらの騒動が起こった経緯について調べてみると、やはりそれなりの理由というものも出てきます。
まず、国内における佐野SA(上り)の営業休止についてですが、高速道路会社からサービスエリアの運営を委託されている業者の社長に問題があるようで、強引に幹部社員を解雇したり(社長の会見では解雇を撤回したそうです)、物品の納入をお願いする業者に対してもその対応の悪さが指摘されているようで、従業員や納品業者が社長の態度に「切れてしまった」というのがこの騒動の真相のようです。
現場で働いている人を大切にしない経営というのは現場での士気を低下させるだけでなく、この会社のように直接利用者を接客しているような業務の場合、お客さんからのクレームが会社にやってきてさらに状況を悪くしていたことが考えられます。恐らく、この会社の社長も、いくら厳しい事を言ってもサービスエリアの営業というのはある意味公共的な仕事であるので、仕事自体をボイコットすることはないだろうと思っていたのかも知れませんが、現場で働く社員が仕事を放棄すれば、そこで働いているアルバイトも仕事をすることができません。今回の騒動に呼応するように台風が日本列島に迫っているので、例年のお盆と比べても影響は少なく、経営陣に与えるダメージは大きくなると計算して今回のボイコットを起こしたと考えることもできますが、ここまでしないと自分達がつぶれてしまうと考えるくらいのプレッシャーがかかっていたと見ることもできます。
幸い佐野SAは上下の間が歩いて移動できるので、利用者の方々がどうしても食事をしたかったりお土産を買いたいと思っても何とかなるので、今回の騒動で明らかになったブラックだと思われる企業の方向転換が図られ、営業が再開されるまでは我慢するのがいいかと思います。
そして、香港の空港での騒動にいたっては佐野SA以上に深刻です。旅行者からするとなぜデモ隊は街でしないで空港で座り込みをするような事をするのか理解に苦しむところもあるかと思いますが、これにもちゃんとした理由があります。ニュースをご覧になっている方はご存知かと思いますが、今香港では、これまで中国本土とは違ってある程度の「自治」が認められてきた中で、犯罪容疑者の中国本土への引き渡しを認める「逃亡犯条例」の改正案について、反対を訴える行動として始まりました。
中国に香港が返還されても「一国二制度」を守ってきた香港にとって「逃亡犯条例」が成立してしまうと、中国政府が香港の特定の人物を「政治犯」と認定して逮捕した場合、香港から中国本土にある収容所に軟禁される可能性が出てくることで、今までのように香港内で中国政府の行動について大っぴらに批判したり、デモなどの抗議活動をしにくくなるという、「香港の中国本土化」が進むことになります。現在もデモを取り締まる警官の行動には批判がありますが、そんな中で町中でデモをしてカメラに映らない中で暴力を加えられるよりも、観光客やビジネス客が集まる空港内でデモをすることによりこの問題を広く知ってもらうだけでなく、自分達の安全も確保できるという計算のもと、こうした事になっているのです。ただ、現在は空港に居座っていた多くの人は追い出されているので、一応は空港は平常を取り戻していますが、今後も大きなデモの予定はあるようなので、これからもった大変な騒動に発展する可能性も出てきています。
このまま行くと中国側の言い分が通ることになり、今後デモに参加した人が大量に逮捕されて中国本土に送られる可能性も出てきます。さらに将来、中国政府に批判的な言動そのものがやりにくくなってきます。結果として、日本にいる私たちもなかなか中国で何が起こっているかという情報が入ってこなくなります。
日本から香港を訪れる観光目的についての訪問についても、香港に認められている自治の精神がなくなってしまえば、香港の観光地としての魅力にも変化が起こってくることも考えられます。どちらにしても日本で生活をしている身としてはそこまで中国と香港の関係に口を挟むことはできませんので、現状を静観しながら香港のデモに参加する人を応援するなり、治安の安定を優先して中国政府の立場を尊重するのかという形になっていくと思います。先に述べた通り、今後もまだまだ香港では当局とデモ隊の対立が起こってくると思いますので、不要不急の用事でなければ、観光での旅行は控えた方が賢明かなと個人的には思います。
そうした事を知らないで出掛けてトラブルに巻き込まれてしまうというのは、不運な面もあるかと思いますが、やはり出掛ける前に旅で回る地域について少しは事前に知識を入れておき、その状況によっては行くことそのものも考えるということも必要になってくるのではないかと思います。特に今回の国内・国外2つの状況をニュースで見て、改めて事前情報の入手についてはしっかり入手して現地の様子を把握しておくことも、特に一人旅でない場合には重要な事だと思いますね。