災害時の簡易ネットスポット構築術

 災害時にライフラインが寸断された場合、その復旧にはそれなりの時間を見なければなりません。それでも水道が使えない場合は給水車のお世話になれば比較的早く水を手に入れることはできるかも知れませんし、ガスはプロパンを使えば普通に使えるまでは早いでしょう。しかし、インフラそのものを復旧しないとどうにもならない電気や電話はその後ということになるかも知れません。

 私たちが使っているインターネットについては、広く普及している光インターネットについて考えると、光ファイバー網だけではなく電気も同時に供給されないと使用することはできません。その点、携帯電話による音声通信やスマートフォンによるネット接続については、基地局までの通信網が寸断されず、通電も保たれていて、端末の電池があればネット接続は可能になります。また、基地局そのものを臨時に設置する移動基地局によって仮復旧させるということもできるでしょう。

 電気の復旧は書いた通りそう早くはできないでしょうが、災害に備えて多くのものを備蓄しているところでは、発電機(太陽光パネルを含む)やバッテリーを用意しているところも多いでしょうから、携帯電話・スマートフォンの充電を無料で利用させることも可能でしょう。しかし、それでは端末を持っている人しか恩恵を受けられません。そうした機器を持っていない人も安否確認が簡単にできるように、だれでも使えるようなインターネットに接続されたパソコンを用意することも大切なのではないかと思います。避難所が学校や公共機関で、被害を免れたノートパソコンがあれば端末を改めて用意する必要はないでしょう。避難所となる多くの公共のスペースにインターネットにつながったパソコンを複数設置し、誰でも簡単に周辺情報や安否情報などを確認できれば、かなりの情報収集および情報発信についての手間が軽減され、何よりも避難所に留まる人たちのためにもなるでしょう。携帯電話しか通信手段がない中でどうやって非常時の通信手段を確保するのかについて今回は紹介したいと思います。

 まず考えられるのは、テザリング可能なスマートフォンを使って、無線LAN経由でノートパソコンを動かすという方法です。ただこの場合は、テザリングを行なうスマートフォン自体をノートパソコンの近くに置いておかなければならず、有線での接続もできませんのでデスクトップパソコンは基本的に使えなくなります。ただ、それでも回線が復旧するまでのつなぎには十分なので、もしそういった状況に陥った場合、自分のスマートフォンでテザリングが可能であるなら、他の人のために使うという判断をされてもいいかと思います。

 私が個人的趣味で購入したのは、USB端子を持ち、USB接続によるデータ端末からのインターネット接続をサポートする無線ルータ「MZK-MR150」(写真右)です。以前、ドコモのLTEで使える「L-02C」(写真右上の赤い端末)というデータ端末を購入して使っていなかったので、これをいざという時に使おうという魂胆です。普段スマートフォンに入れて運用している格安のデータSIMカードをL-02Cに入れ、ルータ本体の設定を済ませて真上にあるUSBポートに接続すると、電源は必要ですが(5V1Aが必要)無線での接続はもちろんのこと、有線での接続も可能です。もちろんSIMカードなしのスマートフォンもWi-Fiでネット接続可能です。さらに小型のスイッチングハブ「ロジテック LAN-SW08/PSW」(写真左)を繋げば、有線で使えるパソコンの台数を増やすことができます。

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 今回、試験的に使っているノートパソコンをルータ経由で有線LAN接続してみました。スイッチングハブにも電源は必要ですが、パソコンのUSB端子に繋げば問題なく動きます。無線ルータの方は最低1Aが必要なので、パソコンのUSB端子単体からの電源供給では電力不足でL-02Cを接続して動作させる事はできません。

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 今回は付属のACアダプターを使いましたが、写真のケーブルが二股になっていて500mA×2で電力供給ができるケーブル(ケーブル単体で、ディスクドライブを安定動作させる用途で売られています)を使えば、ノートパソコンに最低3つのUSB端子があれば何とかノートパソコン用のACアダプターのみで有線と無線が混在したネット環境をどこでも構築することができます。

 このようなシステムを組む場合、問題になるのがSIMカードでサポートされるスピードとダウンロード容量になると思います。ドコモ本家では動画を見続けるような行動を規制すればまず問題はないでしょうが、私が使っているIIJmioのSIMカードは約200kbpsの低速でも、

「24時間(8時~翌8時)のご利用実績が300万パケット(366MB)以上のお客様に対して、ネットワーク混雑時(21時~翌2時)に通信速度制御を行います。 」

 との見解が示されています。多くのユーザーで一枚のSIMカードによる通信を共有する場合、すぐに通信容量が300万パケットを超えてしまうことも想定されますので、非常用回線という事でドコモとの本契約をしているデータ通信端末に入っているSIMを用意すれば、普通に使う分にはストレスはほぼなくなるでしょう。あくまで日常使っている格安SIMで運用をしたいような場合は、今のところ通信速度制御を発表していない「ocn モバイル エントリー d lte 980」の方がおすすめかと思います。これでも、携帯電話の基地局が使えない状態では使えない事に変わりありませんが、アンテナが立っている状況なら通話が規制されていてもネット接続については期待が持てます。私はこれら通信セット一式をリュックに入れて逃げられるようにしていますが(^^;)、いざという時には自動車のバッテリーを使ってインターネット環境を開放することも考えています。

 今回紹介したシステムは、価格が安い時に買ったということもあるかも知れませんが、全部で五千円以下で揃えられました(^^;)。巾着袋に全て入れても片手で持てるくらいコンパクトになりますし、個人的に十分用意して持ち運べるものとなっています。行政の方々がどの程度こうした対策をされているのかわかりませんが、普段でも他の人とインターネット接続を共有したり、有線LANしかないホテルで無線環境を作りたい時にも無線ルータ単体で使えたりするなど、旅全般で使えるようになっていますので、興味ある方はぜひお試し下さい。


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