消えるプリントゴッコ

 昨日の気になったニュースに、2011年12月末で理想科学工業がプリントゴッコの消耗品の発売を終了するそう(プリントゴッコ本体はすでに売っていません)。パソコンとプリンタで印刷をするのが当り前の時代に生きている私たちにとってはもはや無用のものと判断されたのかも知れませんが、やはり寂しいものがあります。こうした簡易印刷機というのは、全く電気がなくても印刷できるものであるからです。

 この簡易印刷機が出て爆発的に売れたのは、やはり年賀状をカラーで簡単に作ることができるということでしょう。刷り方としてはガリ版刷りと同じように一枚ずつ葉書を押し当てるように印刷して行くのですが、インクがかすれてくると直接インクをチューブから出して補充するところなどまさしくアナログの極みです。学生の時、急遽企画したコンサートを開催するのにチケットを作る必要があり、とても印刷所に頼む時間すらなかったので、このプリントゴッコで延々と作ったのは今から思い出すとよくまあやったなと思います。このような経験は同世代の方なら多くの方がされてきたのではないでしょうか。

 その後、インクリボンで印刷するワープロからインクで印刷するプリンタとパソコンで行なう年賀状作りに移行したため次第にプリントゴッコのシェアは低下し、ついに今年いっぱいで完全に使えなくなってしまうというのが一般的な認識だろうと思います。しかし、私はむしろ、年賀状の印刷は今でもプリントゴッコの方が便利に使えるのではないかと思っています。まとまった枚数の葉書をセットして自動的に印刷されるのは便利な反面、そこにトラブルが出たらプリンタはまとまった数の印刷に失敗した葉書を生み出してしまうかも知れませんし(^^;)。プリントゴッコの場合は電話帳や漫画雑誌に挟み込んでおくことで確実に乾燥でき、作業の手順さえ理解すればお子さんやお年寄りなど、パソコンを全く使えない人でも簡単に扱うことができます。

 私がプリントゴッコを見限ったのは、今回生産を終了する消耗品の値段を発売元が決して小売店に対して値下げさせることなく定価で売り続けることに嫌気が差したからです。プリントゴッコ発売当初は複数のメーカーから謄写版印刷を模した家庭用印刷機が出ていましたが、しだいにプリントゴッコ一本になっていくとともに、定価でなければ消耗品が買えないようになっていくにつれ、常にメーカーの言い値で買うことへのストレスがたまってきたといいますか(^^;)。メーカーの方に多少の値引きを許すだけの裁量があれば、少なくとも私はプリンタでの印刷をしないでプリントゴッコを使っていたでしょう。現在、このメーカーの主力商品であるデジタル印刷機・リソグラフは大量に印刷する際のコストの低さがセールスポイントですが、これもプリンタメーカーが考え方を変え、業務用としてカートリッジはそのままにインクだけを自動的に注入するようなインクジェットプリンタを世に出せば、たちまちそちらの方に取って代わられてしまうでしょう。そう考えると、手作り感たっぷりで小回りがきき、在りし日のガリ版印刷を連想させるプリントゴッコの方がやり方次第によっては新たなユーザーを獲得できるように私には思えるのですが、発売元が決めたことならしょうがありませんね。

 プリントゴッコはなくなっても、いざという時に備え、パソコンや電気がなくても印刷できる機材を必要に応じて準備しておくということは、大切なことだと思います。電気の通じない中でも多くの人に情報を届けるため、まだガリ版印刷一式を保管している学校などにはきちんとした保管をしておいていただきたいと、またやってきた台風情報をテレビで見ながらしみじみと思います。台風の進路にあたっている地方の方々は、ぜひ早めに安全なところへ避難し、身の安全を確保してください。

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消えるプリントゴッコ” に1件のフィードバックがあります

  1. とつぜんブログ 投稿作成者

    プリントゴッコの思い出

     プリントゴッコが来年一杯で完全に終る。簡易印刷機プリントゴッコ本体は2008年に生産を終っているが、ユーザー向けに消耗品の生産を続けていたが、それの生産も終る。
     プリントゴッコで年賀状を印刷した人も多かっただろう。小生は年賀状印刷に使ったことはない……

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