携帯電話会社の解約金の妥当性を問う前に

 携帯電話の2年契約の割引プランを途中で解約する際、一律で9975円の解約金を支払わなければならない契約条項が違法かどうかが争われた裁判が最高裁で決着しました。判決は携帯電話会社の主張を全面的に支持し、どんな場合でも更新月以外の解約については一律の解約金がかかることが認められた形です。

 つまり、2年契約で携帯電話大手3社と契約した場合、2年経過する際に1度訪れる「更新月」に解約しないと一律で9975円がかかってしまうわけです。今回の裁判で争われた内容は解約金についての契約条項に絞ったものであったため、この問題に付随するもう一つの問題について語られたのかどうか不明ですが、私が問題だと思っていることはこの更新月の通知に関することです。

 2年の契約ということは2年経てば契約は終了します。ただし、契約時の取り決めで自動的に更新することになっています。それは、2年経って契約期間が満了した場合、改めて更新することを忘れると、2年契約でない「通常の」料金が適用されることになってしまい契約内容を理解していないとなぜ急に料金が上がってしまったのかわからずにトラブルの元になってしまうことを考慮したことが考えられます。ただ、中には2年の契約満了を待って他の会社に契約を移そうと考える人もいます。そういう人でもついうっかり自分がいつ契約をしたのか忘れてしまう人もいるかも知れません。更新月の前に、ダイレクトメールが無理なら端末への直送メールという形で更新月のお知らせを送ることは、利用者の立場に沿った情報提供として当然やるべきことだと思うのですが。ホームページからIDを作ってログインし、メールでの料金通知の申し込みをユーザーがやることで通知してくれる会社はあるようですが、紙の請求書自体をなくしていく方針の中であれば、ガラケーのみでネットは使っていないような契約者が更新月を知るためには、自分からショップへ行くか問い合わせをするしかありません。全ての2年縛りの契約者に必ず通知を出してくれた方が契約者も安心するのではないかと思うのですが。

 そしてもう一つの問題として、なぜ一般の人が選択肢がある中で2年縛りのある契約を選ばざるを得ないのかということもあまり話題になっていないのではないかと思います。データ通信のみの契約では、高速通信が月間2GB程度なら月千円以下でもすぐ解約しても解約金は取らないでMVNO業者は提供しているのに、携帯会社3社の料金が高いと感じる方も多いでしょう。通話中心の3Gプランにおいても、MVNOで提供している日本通信の「携帯電話SIM」では短期間の乗り換えで利用者を儲けさせることを防ぐため10ヶ月は解約金の9000円(税別)が請求されますが、それ以降はMNP転出にかかる費用はかかるものの解約金はかかりません。その条件において、毎月の料金は以下のようになっています(以下の料金は全て税別です)。

・無料通話1300円繰り越しなしプラン(通話料30秒20円)…月々1290円
・無料通話2700円繰り越しなしプラン(通話料30秒18円)…月々2290円
・無料通話5000円繰り越しなしプラン(通話料30秒14円)…月々3710円

 となっています。日本通信のプランはドコモのSIMを使っていますのでここではドコモのFOMA用通話プランと比較してみたいと思いますが、実は料金については結構複雑なので、まずは全く割引のない(いつ解約しても解約金はかからない)ベーシックプランについて上のプランに近いものを紹介します。

・タイプSS(無料通話1000円2ヶ月繰り越し家族間分け合い 30秒20円)…月々3600円
・タイプS(無料通話2000円2ヶ月繰り越し家族間分け合い 30秒18円)…月々4600円
・タイプM(無料通話4000円2ヶ月繰り越し家族間分け合い 30秒14円)…月々6600円

 ただこれが、2年継続を約束することで半額になるので安くなるわけです。

・タイプSS(ファミ割またはひとりでも割)…月々1800円
・タイプS(ファミ割またはひとりでも割)…月々2300円
・タイプM(ファミ割またはひとりでも割)…月々3300円

 さらに、ドコモが指定する端末を購入した人が入ることができるバリュープランに加入することにより基本料金顔体も安く変わるので、更に毎月の料金が安くなる仕組みがあり、ほとんどの方はこれから紹介する2年縛りの料金で利用されていると思います。この場合タイプは同じですがバリュープラン適用を示す名前が付きます。

・タイプSSバリュー…基本使用料1864円 いちねん割引付1204円 2年縛り934円
・タイプSバリュー…基本使用料3000円 いちねん割引付1950円 2年縛り1500円
・タイプMバリュー…基本使用料5000円 いちねん割引付3250円 2年縛り2500円

 こうして比較してみると、日本通信の「携帯電話SIM」はあくまでドコモの回線を借りて提供しているにも関わらず、とりあえず10ヶ月契約すればその後いつ解約しても1万円近い料金はかからないわけですから、同じ条件でいつでも解約可能なドコモのプランはちょっと高く請求し過ぎではないかと思えます。契約してから10ヶ月までは違いますが、10ヶ月を過ぎた段階では最初に紹介したドコモのプランの中では一番高いベーシックプラン各種割引前の料金との比較が妥当でしょう(日本通信の場合は端末自体は提供していないため)。私はこの料金体系は、以前ネットショッピングの楽天で行なわれたような、2年縛りにすることで50%割引後の価格を安いと出していながら、各プランの割引前価格ではほとんどの人が契約していないと思われるのに、それとの比較で安く思わせるような手法を使っているように思えてなりません。個人的には最安で千円を割る価格は十分安いとは思いますが、割引前の価格についてはもう少し実勢に即した価格に下げ、割引も50パーセントではなく割引率を少なくした上で現状の価格に据え置くような形に落ち着かせるのがいいと思うのですが。


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