冬季オリンピック報道を振り返る

 2014年冬季オリンピックが終わりました。私自身ウィンタースポーツはほとんどしておらず、従って選手のことをああだこうだ言う資格は全くないのですが、それでもつい書かずにはおられなくて(^^;)、いつもこのブログで書いていることとは全く違いますが、一通り競技を見終った時点でその報道について書かせていただこうかと思います。

 前回の冬季オリンピックを見ていても思ったのですが、今シーズンワールドカップで表彰台に上った選手をピックアップし、例えばたまたま世界の強豪が休んでいた時に表彰台に上った選手までメダルを期待するような報道が多かったような気がしました。この辺は事前の国内でのメダリスト予想と、海外メディアが挙げたメダル予想とのギャップが少なからずあり、期待されすぎた選手が気の毒に思えるところもありました。

 スノーボードハーフパイプの平岡卓選手、平野歩夢選手、同じくスノーボードパラレル大回転の竹内智香選手、フリースタイルスキーハーフパイプの小野塚彩那選手は事前に海外メディアのメダル予想に入っていましたが、今回大活躍だった男子のスキージャンプ陣は個人団体とも全くメダルを海外から期待されていないようでした。日本のマスメディアは葛西紀明選手は期待されるメダル候補として連日報道していましたが、私自身ジャンプのテレビ観戦が好きで、BSの有料放送無料の日にはできるだけジャンプのワールドカップを見るようにしていたので若干違った感想を持っていました。今シーズンのワールドカップでの海外勢の層の厚さと強さを見るにつけ、日本選手や日本チームを応援したいという気はあっても、さすがに個人でも団体でもメダルは難しく、それこそ日本選手がスタートする時に神風が吹いてくれるようにテレビ観戦しながら応援していたのでした。

 しかし、実際に競技が開始されるとノーマルヒルではある意味予想通りの結果だったものの、ラージヒルの葛西選手は今シーズン、ワールドカップポイントを積み重ね、スタート順が最後に近かったことがうまく働いたのか、ご存知のように金メダルまであとわずかの銀メダルを獲得し、注目が一気に高まりました。その流れなのか風が多少悪くても海外勢にひけを撮らない飛距離を連発し、団体でもメダルを獲得し、私自身の一番印象的なオリンピックのシーンとなりました。関係者の方々を含め、心からおめでとうと言わせていただきたいと思います。

 葛西紀明選手については7大会連続でのオリンピック出場で、現役を続けるモチベーションについて、本来ならば家族の中で秘めておきたいような内幕をも大々的に報道していたのが気にかかりましたが、個人的にはもっと報道してほしかったことがあります。それは、地元の先輩である秋元正博氏の存在でした。

 日本のジャンプは1970年の札幌オリンピックで大きく盛り上がりましたが、その後海外の強豪が出場する海外開催のワールドカップで日本勢初の優勝を飾り、一躍有名になったのが秋元正博氏でした。個人的にはあの当時の絶対王者、フィンランドのマッチ・ニッカネン選手が出た大会でも勝利したということで、私はこれまでの日本ジャンプ選手最強ではないかとすら思っています。そうして期待された秋元氏ですが、レークプラシッドオリンピックの70メートル級ジャンプではわずか50cmの差で4位となり、メダルには届かず涙を飲みました。次のサラエボオリンピックでもメダルを期待されたものの、直前に交通事故を起こして出場を辞退せざるを得ませんでした。何とか競技に復帰し海外を転戦する中、1986年3月の世界フライング選手権で転倒して大怪我を負い、競技生活の続行はまず不可能だと思われていましたが、懸命のリハビリが功を奏し、不死鳥のように復活したものの、オリンピックのメダルとは縁がなく現役を引退したのでした。事故の大怪我から競技生活復活をかけて、秋元氏が始動した最初の一歩は、まだ葛西選手が中学生の時で、葛西選手も練習をしていた地元の台だったという話があります。秋元氏も自分の後継者として目を付けたのか、葛西選手は秋元氏を慕って同じチームに所属し、秋元氏と入れ替わるようにして海外を転戦し頭角を表していきます。葛西選手があれだけストイックに競技人生を続けていた理由の一つに、秋元氏の存在があったのではないかと思う所以です。

 この話はジャンプ競技が好きで長年見続けている人ならどなたもご存知のエピソードだと思いますが、今回のジャンプについての一連の報道を私も随分見ましたが、葛西選手と秋元氏を並べて報道したものは見付からず、つくづく日本のメディアはメダルを取らない人には冷たいなと感じる次第です。今回のオリンピックもメダルに限りなく近い入賞者が多く出ましたが、メダルがなくてもその想いは必ず将来にわたって引き継がれていくというのは今回紹介した秋元氏から葛西選手につながるストーリーでも明らかでしょう。今注目を浴びているウィンタースポーツも、時期を過ぎればすぐにその存在自体が忘れられるかも知れません。今までのようにオリンピックシーズン以外のテレビ放送も特定の競技のみに集中するのではなく、これだけ人気のあるジャンプなのですから、せめて毎年年末年始に行なわれる伝統のジャンプ週間くらいは日本でも地上波で生放送してくれればいいのになと思います。他の競技でもメインの大会を積極的に地上波で放送していくことで、競技レベルの底上げに繋がるのではないかと思うのですが何とかならないものでしょうか(^^;)。


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冬季オリンピック報道を振り返る」への2件のフィードバック

  1. 桃太郎@東大阪 投稿作成者

    スキージャンプの国内大会の中継はよくあるのですが、海外のW杯については中継が皆無ですね。
    高梨沙羅選手の活躍もあるし、深夜帯にでも放送して欲しいです。

  2. てら 投稿作成者

    桃太郎@東大阪 さん コメントありがとうございました。
    ジャンプのフライング世界選手権は隔年開催で前回が2012年なので今年の3月に開催されるのですが、残念ながら日本でのテレビ中継はないようです。200メートルを超えるジャンプも出る試合なので、テレビででも見ることができたら、相当見る人がいるのではないかと思うのですが。
    海外スポーツで野球やサッカーは日本人選手出場試合はもれなく放送し、特に今年のヤンキースの試合はオープン戦まで中継があることを考えると、あれだけ日本中が注目したスキージャンプの大きな試合を放送してくれないのは本当に残念ですね。

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