テレビ放送における「4K」が「地デジ難視聴対策衛星放送」を駆逐する現実

 テレビの高画質化の規格である「4K」について、2016年から4K放送をBSの6波に割り当てる方針を総務省が各方面と調整しているとのこと。それ自体は別に何も言うことはありませんが、4K放送という高画質放送を使う帯域を確保するため、現在放送しているBS各局に電波帯域の一部返上を要請(新しい圧縮技術により少ない帯域でも放送継続には問題ないとの見解のよう)するだけでなく、先日話題にしていた地デジ難視聴対策衛星放送を2015年3月末で終了すろ予定とのこと。これは、現状でほとんど利用されていないチャンネルだからこその措置なのかも知れませんが、いかにもテレビの視聴実態を考えないで決めたように私には思えます。

 具体的に2016年から4K放送が実施されることになったとして、現在の地上波・BS・CS以外の新たなプログラムが組まれることになるのでしょうか。どちらにしても4Kの高画質を楽しむためには新たにテレビを買い替える必要があり、放送内容も対応している必要がありますので、経済界からの要請もあるのかも知れませんが、どれだけ多くの人がその恩恵を受けることができるのかどうか。それよりも、現在ほとんど放送されていることすら知られていない東京地区地上波の放送がBSで行なわれていることが認知されればかなり視聴者の食いつきがあるはずです。

20140714_182237

 自宅のテレビの番組表からアクセスすると、写真のメッセージが出る案内に行きつきます。地デジ難視聴対策衛星放送は通常はスクランブルがかかっていて、自分の住んでいる場所が認定されていないとスクランブルを外してもらえないのですが、普通にスクランブルさえはずしてくれれば地方と首都圏の情報が一体化されることになるので、地方の人からすればものすごい需要があるチャンネルになるでしょう。理論上はどんな山の中であっても現在BS放送がきれいに映るなら関東で流れている地上波の全てのチャンネル(NHKを含む)を見られるのですから、見られるのなら見たいと思う方は多いでしょう。

 この事については何回も紹介してきたのでご存知の方もいるかと思いますが、元々は地上波の放送を見られない人のために用意されたチャンネルなのですが、例えば地上波でテレビ東京系の放送が見られない(テレビ東京系の地方局がない)難視聴地域では、わざわざテレビ東京の再送信にのみスクランブルをかけるような決まりになっているそうです。私の住む地域でも、もしテレビ東京だけでもスクランブルを解除してくれれば、テレビ東京系列が独占で放映権を獲得しているスポーツイベントを見られないこともなかったのですが、もしこの報道通りに進んで行ってしまうのなら、今後多くの地域でテレビ東京や他の民放(民放4局をカバーしていない地域はざらにあります)を放送中に同時に見ることはまず不可能になってしまうでしょう。普通に考えてもこの不景気な時代にどの都道府県でも関東と同じ民放5局体制にすることは設備投資の面からまず無理でしょうし、そうなると限られた地域以外では将来的にテレビ視聴を一部諦めなくてはいけなくなるということにもつながってきます。となると、必然的に首都圏と地方ではテレビ視聴における格差を無くす方法がなくなってしまうわけで、これはテレビを楽しみにしている地方の人に納得してもらえるのかちょっと疑問に思えてきますね。

 4K放送は6波だと言いますが、まず地上波の再送信をすることはないでしょう。独自の高画質な番組をどれだけ作ることができるかと同時に、一体どれくらいの人が4K放送の恩恵に預かることができるのかもわかりません。将来の高品質テレビ形式を日本の技術陣が多くの国で実用化させることで、国際的な技術競争の主導権を握りたいという考えも決定を早めた理由の一つだということですが、確実に国際規格を取れるかどうかもわかりません。このままではあまりにも視聴者無視で、一般の人のテレビ離れが進む可能性もテレビ業界の方は考えておいた方がいいのではないでしょうか。さらに言うと、この高画質化は4Kで打ち止めではなく8Kもあるということですから、今焦って4Kテレビを買うことは、普通にテレビを見ているならお金が相当有り余っている人でなければ、まず考えなくてもいいと思います。


スポンサーリンク

コメントを残す