キングジムの新製品発表の余波

 ちょっと前にキングジムのツイッターをチェックしていたところ、2015年12月8日に新製品発表を行なうというツイートがありました。特設サイトにあった動画の最後にキーボードの姿があったため、これは同社が出しているテキスト入力に特化した「ポメラ」の新しい製品が出るのかと色めき立ったのは言うまでもありません。

 ネットの反応も上々で、さあどんなものが来るのか、状況によってはまた買ってしまいそうだと思っていたのですが、残念ながら新しい製品はポメラではなく、私の思っていたものとは違ったWindows10塔載のミニノート「ポータブック」ということで購入をパスすることがほぼ決定しました。ASUSのタブレットにぴったり合った小型Bluetoothキーボードの付いたT90CHIを持っていることもありますし。まあ、後日価格が落ちてきたら購入を考えないこともありませんが、私個人が望むものと、販売元のキングジムが考えた購売層とは違ったということなのでしょう。

 ネットでの報道の中にはキングジムがパソコンを出すことに新しいビジネス展開の方向を感じさせるというようなものもありましたが、事務機器メーカーであるキングジムがパソコンを出しては他のパソコンを出している全世界のメーカーとの競争になってしまいます。果たしてその中で、日本のパソコンユーザーの心を捉え、買ってもらうだけの魅力をどれくらい発信できるのでしょうか。

 今までポメラが注目されてきたのは、ポメラが製品として孤高の存在であり、単なるテキスト入力マシンとしての潔い割り切り方があったからだと思います。確かにパソコンでない文字入力に特化したハードは買う人を選ぶということはあるでしょう。しかし、そうして機能を絞るほど製品としての寿命は長くなり、値崩れをしないまま長期間売り続けることができます。今回の発表があったせいかネットでの実勢価格が上昇に転じたDM100がまさにそうです。さらに、ポメラの初代機DM10は機械的な故障さえなければ今も十分使えるレベルですが、同じ時期に出たノートパソコンはOSが古くなってサポートが終了したり、動作自体がアプリやデータを溜め込むことで使い物にならなくなっています。恐らくこうした道をポータブックを辿るでしょう。

 はっきり言って、今回の発表では今後ポメラはどうなるのかという事には全く触れられていません。キングジムの代表ツイッターではDM100はまだ発売は継続されるような事を書いていましたが、これだけキングジムの新製品発表というニュースに多くの人の注目が集まったのは、DM100の機能ではまだテキスト入力マシンとして完成し尽くされていないという事を多くの人が思っているということも確かでしょう。

 私が考える具体的な事柄について書かせていただくと、キーボードの質感はせめてLenovoのThinkPadのキーボードくらいのこだわりがないと、なかなか手になじむほどにはキーボードを打てませんし、キーボードの入れ替えやローマ字入力のカスタマイズも当り前にできて欲しいところです。さらに搭載エディタについては機能強化だけでなく、文字コードにシフトJISだけでなくUTF-8も使えるようにしてくれないと、いわゆるテキスト入力を生業にしている人にとっては使いにくい場面も出てきます。今回出た製品のキーボードを開いてセッティングすることで持ち運びサイズを小さくできるメリットはありますが、文字打ちにキーボードを酷使する人にとっては、いつ壊れるかヒヤヒヤしながら使うことにもなるでしょう。これなら、Windowsタブレットを二つ折りキーボードと一緒に使った方が、キーボードがダメになっても新しいもので代替が効きますし、個人的には安心して使うことができるかなと思えます。

 さらに、これはDM100で実現されていましたが、電源を入れたり本体を開けばすぐにスリープから安定して復帰し、入力作業にすぐに入れフリーズすることが極めて少ない安定感がテキスト入力を主にする場合には何よりも大事であると言えます。Windows機のような「パソコン」では、使っているうちに様々なソフトやアップデーターが動作を圧迫し、起動までに時間がかかったり何かの拍子でフリーズすることが起きてしまっては、例えば会議の速記代わりに使うことは私には恐くてとてもできません。Bluetoothを使ってのキーボード動作というのも混信して途切れる可能性があるのでこれはという大事な席になればなるほどNGです。本体の安定性をなにより大事にするという意味では、まだ私はDM100の方が優れていると思うので、いざという時のためにはまだまだ必要な製品であると思います。

 最後に、電池の問題についても一言。Windows10塔載のマシンを乾電池で動かすことはまず不可能なので書いても仕方ない事でしょうが、たとえ、microUSB端子からモバイルバッテリーを通じて充電可能となったとしても、何かの拍子に内蔵電池が空になっていたらしばらくは起動すらできないというリスクをパソコンは持っています。その点、同じように電池が空になってしまったとしても、予備の単三電池2本を入れ替えたり、最悪の場合でもコンビニに買いに行けばすぐ作業を始められるという点でも、バソコンの中に一台乾電池で動くポメラがあるとホッとします。災害時の備えとしても、今持っているDM100は大切にしなければと思いました。

 もし今後のキングジムがポメラよりも小さくて持ち運びのできるノートパソコンを売っていく方向に行くという事なら、テキストエディタの機能改善は難しいにしても、せめてDM100のアップデートという形でキーボードの入れ替えとローマ字カスタマイズ機能をGoogle日本語入力並みにできるような機能改善を要望したいですね。それをやってくれればもう一台確保しておこうという気になります。


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